偽りでもいい ARS × KJ∞ ７

１６４・波多野side・~回想~ ページ14

・波多野side・〜回想〜



「これが、医療という現場だ」



親父の言葉が深く深く心に突き刺さる



「お前には、この現場で生きていく覚悟があるのか？

人の命と向き合う覚悟があるのか？」



人の命と向き合う覚悟・・・


考えたこともなかった


だって、親父のこんな姿見たことなかったし


俺の目指す現場がこんなものだなんてことも


初めて知った



「そんな覚悟もないなら

お前にこの現場を目指す資格はない」



今の俺にとってこの言葉は


凄く、辛いものだった


コツコツと靴を鳴らしながら去っていく親父


ギュッて手のひらを握り締めた


親父は分かってたんだ


俺が思っていることも、全部


悔しくて


自分にムカついて



波「チクショッ・・・・・・」



覚悟なんて、あるはずないじゃんか


俺は人の命が助けたいとか


そういう深い想いで医師を目指してる訳じゃない


世の中、そんなもんだろ？


とりあえず大学に入る人


収入が安定してるから公務員になる人


別にやリたいことがないから医者を目指す俺


何がダメ？




キィ・・・




顔を上げる



「何で泣いてるの？」



さっきの女の子が車椅子から降りて


俺の目の前にいた



「お兄ちゃんも、お母さん死んじゃったの？」



その言葉にグッて心臓が痛んだ


この子は、ちゃんと受け入れてるのか


お母さんはもういない


ちゃんと、受け止めてる


それに比べて、俺は情けないな


結局逃げてばっかり


人の命と向き合うのが、怖いから


優しく、目の前の女の子を抱き締めた


ありがとう、おかげで気づく事が出来た



波「もう、逃げないから・・・」

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