あざといアイドルに恋した。《Ryohei.A》

＊14 ページ15

.




あ 「ふぁ〜」


バイトが終わって真っ先にソファーにダイブ。


時計の針は既に２３時過ぎを指していた。




.




さっきまではあんなに楽しかったのに…


家に帰ると急に虚無感に襲われる。こんなの初めてだ。




.




気を紛らわせるように何気なくいつもはあまり見ないテレビのリモコンを手に取り、それをつける。


あ 「…」


すると、不運にもついさっきまで見ていた笑顔がそこにはあった。




.




…阿部さんだ。




.




もう、どうしてこういう時に限って…




.




テレビで映し出されるその笑顔は、さっきまで見ていた笑顔と何ら変わらない。


こういうのを見ると、当たり前の距離が急に遠く感じて。


やっぱり彼は芸能人なんだ、と思い知らされる。




.




テレビを見ていても、実物の方が断然かっこいいって思う。




.





前まではアイドルだなんて全然興味がなかったのに。




.




でも、阿部さんはなんか違うんだ。…すっごく気になるんだ。




.




『また会いたい』


最後そんな簡単な言葉がなかなか言い出せなくて、結局阿部さんは帰ってしまった。


私がもっと積極的な女の子だったら…




.




ポケットの中に手を入れてみても、あのハンカチはもうない。また会えるかもしれない唯一の頼みの綱。




.




あ 「…でもちょっとは話せたし」


そうだよ。阿部さんだってわざわざ今日来て下さったんだし


ハンカチのお礼だってきちんと言えたんだもん。今日会えただけ…良いじゃない。




.




二回会えただけでも…




.





ぎゅーと目を瞑って枕に顔を伏せる。




.




また会いたい…そう言ったら阿部さんは迷惑ですか？




.

＊15 A.side→←＊13

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す