秋空 (ページ4)

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「よし、帰ろう。」

『うん。』

海人が持ってきていた私の鞄を
受け取り歩き出す。

「…最初から付き合えないんだったら
来なきゃいいのに…」

『そんな事さすがにできないよ。』

「だから、俺が止めにはいってあげたんじゃん？いつもそうやって申し訳なさそうな顔してさー」

『別にそんな顔してないし、海人がいなくたってちゃんと断るつもりだったもん』

「なんて？」

屋上の扉に手をかけた海人が
振り向きなら聞いてきた。

『…』

海人が好きだから
なんて言えるわけもなくて
黙って立ち止まっていると

『ほらね言えないでしょ？』

その言葉と共に
海人の香りに包まれた。

スキンシップの多い海人にとっては
きっとなんてことない行動なんだろうな

そう思うと無性に哀しくなった。

「いいよ、私の面倒なんて見なくて
そんなんだから、彼女できないんだよ。笑」

海人の腕をほどき歩き出した。

「面倒なんて思ってないよ？
それに、彼女だってできないじゃなくて
作らないだけ。」

そりゃ、あんだけ女の子が寄ってくるんだもん、作ろうと思えば作れるよね。

きっと幼なじみとして
私の面倒みなきゃいけないから…

『でも海人がいなくても大丈夫だから』

「大丈夫ってなにが？」

『ちゃんと断れるってこと』

「今言えなかったじゃん」

なぜか少し怒った様子で
私の後ろを着いてきた。

『言えるよー』

「うそ！この前も先輩に告白された時
はっきり断れてなかったし」

『あの時は初めて告白されたから
うまく伝えれなかっただけ』

「いや、中学の頃も俺と付き合ってるんじゃないかって言われた時、ちゃんと否定できてなかったじゃん？」

「あの後、俺がちゃんと皆に話したから誤解だってわかってもらえたけど」

それは、海人が好きだから
言えなかったのに…

『もう、言えるから！』

海人の発言に少し苛立って

『好きな人いるってもう言えるから
海人は心配しなくていいよ』

そんな風に応えると…

「…誰」

靴を履き替えようとしていた
私の手をとり色のない瞳で聞いてきた。