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「大切な人だもんね」
その一言に何故か勇太が
遠くに行ってしまいそうな気がして
繋がれた手を強く握り返した。
「…ごめん。俺カッコ悪いね。」
『違う！勇太はカッコ悪くなんかない！
私もあの時、すぐに言えば良かったのに…
タイミング逃して…』
「Aのせいじゃないでしょ。
そりゃあ、驚くよ。
あんなスゴイ人になってるんだもん。」
俯く私の頭を優しく撫でてくれる
その手にはいつもの暖かさがあった。
「A…さすがにちょっと痛いかも？笑」
強く握る手に視線を向けて
クスッと笑う勇太。
『あっ！ごめん！』
咄嗟にその手を離そうとした
「離してとは行ってないけど？」
離そうとした私の手は
簡単に勇太の手の中に包まれた。
「ごめん。俺…自分から離すつもりはないから」
『え？』
「Aのこと…」
「自分からは離さない。
けど…縛り付けてまで一緒にいたくはない。
だから…Aが選んだことなら
ちゃんと受けとめる。」
『待って…その言い方だとまるで…
私が、勇太を選ばないみたい…』
勇太の言葉に次第に視界が歪んでいく…
「違うよ。俺はずるいから…
離さないじゃなくて、離せないんだ…
だから、Aが決めたことなら
俺も納得できる。
結局は、Aに選ばせてるようで
責任擦り付けてるだけ。」
どこか寂しく、でも優しく微笑む。
「ごめんね、これが俺ができる
精一杯の優しさだから。」
ポロポロとこぼれる涙を
優しく拭ってくれる勇太。
『…っ優しいよ…
優しすぎるよ…』
「…ありがとう。
海人くんにちゃんと…
会いに行こう…」
優しく抱きしめそっと呟いた
勇太の言葉に
小さく…頷いた…
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作者名：むぎ | 作成日時：2019年12月8日 9時
