61-you side- ページ11
-you side--------------
永瀬くんと二人。
一つの傘の中寄り添いながら
帰る帰り道。
永瀬くんといると
どうしてだか、高鳴る鼓動。
それを必死に抑えようと
別の事を頭で考える。
私の動揺する心のように
強弱をつけて降り注ぐ雨。
あれ…？
さっきまで僅かに雨が当たってたはずの肩に
雨が当たらなくなった。
驚いて永瀬くんの方を見ると
明らかに濡れている永瀬くんの肩。
永瀬くんが持つ傘に手をかけ
永瀬くんの方へと傘を押し付けた。
その時…
永瀬くんは、平然と私の事を
Aと呼んだ。
『佐々木さんにして。名前で呼ばないで…』
ほんとは変わらず名前を呼んでくれた事が
とても嬉しかった。
だけど…
永瀬くんに名前を呼ばれるだけで
胸がキュっと締め付けられ
息苦しくなる。
俯いたままでいると
突然、永瀬くんは私の手を握り
自分の方へとグッと私を引き寄せた。
重なる手と手。
さっきまでは僅な距離を空け
保たれていたお互いの空間が
いとも簡単に崩れた。
永瀬くんは自分が呼ぶのは勝手だと
言い張り、逃げていかないようにと
私の手を強く握りしめた。
繋がれた手が
触れ合う肩が熱い。
「嫌って言っても離さんから」
その一言で、きっと彼の性格上
引くことはないのだろう。
そう思い、渋々了承した。
さっきよりも早くなった鼓動に合わせ
強くなる雨音。
変わらずに呼んでくれた名前。
俯いていても視界に入る繋がれた手。
雨の中僅かに香る彼の香り。
その一つ一つが
彼の存在を大きくしていき
きつく胸を締め付けた。
--------------
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 51人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：むぎ | 作成日時：2019年8月29日 13時
