標的06 ページ8
『とりあえず今日の夕飯はハンバーグだなー』
『お姉ちゃんのハンバーグ、大好きです!!』
『おー、それはよかった!!チーズインハンバーグにしようかと思ってたんだ』
……今思えば、私はらしくない馬鹿げたことを願ったものだと後悔している。
いつまでも、なんて永遠に続く平和な日常があるはずないのに。
***
毎夜のように見る夢が前世の最後の記憶だと知ったのは、中学校に上がってすぐのことだった。
今は4月。まだ中学生になって日が浅い私達、新入生はその日、先生から校内の案内を受けていた。
隣にいるツナは、どこか憂鬱そうで、この後に行われる自己紹介で噛まないように小声で練習している。
ふと顔を上げれば、空は晴れ渡っており、太陽が眩しい。思わず目を細めているとふと屋上に目が行った。そこには見下ろしている二人組がいる。
遠すぎてよくわからないが男と女だってことはわかる。日本人特有の黒髪だ。
私は母が栗色の髪なので私もツナも栗色の髪。瞳は姉弟揃って蜂蜜色。と言っても私とツナは双子だ。似ているのは仕方がないと思う。
とはいえ、二卵性なので性格、髪型は似ていないが。なんでツナの髪はあんなツンツンとしているのだろう。不思議でたまらない。
前にツナの髪に触ったことがある。もちろんツナが寝ている時だ。かなりサラサラしてた。もう沢田家七不思議の一つに数えてもいい気がします。
ふわり。風でアイボリー色のマフラーが靡く。それと同時に小さな桜色の花びらが入ってきた。
ツナの髪についたので取ってあげるとツナがハッとする。
「タマ?どうしたの?」
「え、えっと……あの、はは、花びらが、その」
小さな花弁をツナに見せるとあ、本当だとツナは笑みを浮かべる。
「ありがとう、タマ」
「い、いえいえ!!あのツナ。ぼーっとして歩いてると壁にぶつかっちゃう……ので、そのちゃんと前見て……。!!」
ガンッと言ったそばからツナが曲がり角付近の壁に激突する。周りから笑いが出るが私は、ツナに近寄る。
「ツナ!!だ、大丈夫ですか!!びょ、病院!よ、よよよ養護教諭***!!」
「へ、平気。平気だから。最後の方、何言ってるかわかんないよ……」
遠回しに話を大きくしないでと言っている気がする。コクコクと何度も頷けば、全くとツナは少し困ったような笑みを浮かべた。
もう、ツナのことお兄ちゃんと呼んでしまいたい。年上の意地とプライドにかけて呼びませんけど。
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