標的04 ページ6
翌日。不良の3人が停学になった。理由はもうわかりきっているから言わなくても大丈夫だろう。
彼らが停学処分を受けた日から数日が経ち、平日の放課後。
そろそろ帰ろうとした時に外を見ると分厚い雲に覆われた曇り空。そろそろ雨が降ってきてもおかしくない天気だ。
可笑しい。今日は晴れのはずなのに。傘、家に忘れてしまった……どうしよう。
教務室で借りられるかな、と考えていたら肩を叩かれた。振り返ればお姉ちゃんがいる。
「タマ、一緒に帰ろーぜ!!」
「お姉ちゃん……」
にひっと笑うお姉ちゃんの手には2本の傘。その内の一本は私のものだ。ぱああっ、と表情が明るくなる。
「お姉ちゃん、持ってきてくれたんですか!?」
「ん、まあな!!こんな事もあろうかと持ってきておいたんだぜ!!」
「お姉ちゃん……ありがとうございます!!」
傘を受け取り笑えばお姉ちゃんはいいってことよ、と得意そうに言う。
生徒玄関を出ればザーーと雨が降ってきた。ゴロゴロ、と雷の音も遠からず聞こえてくる。
雷は嫌いだ。風邪で学校を休んでいる時、雷が近くの電線に落ちたせいでショートして停電になったことがあるから。
家の電気が一瞬で暗くなる。お姉ちゃんもお母さんもお父さんも名を呼んでも誰もいない状況で……一人ぼっち。
どれほど心細かったか。お姉ちゃんが帰ってきた時、どれほど安心したか、今でも覚えている。
雷、あっち行かないでしょうか……
空を眺めていると「タマ〜〜」と名を呼ばれる。
「そろそろ帰るぞー!!雷は隣町の方にあるからまだ大丈夫だ!!早く家に帰れば怖くない!!」
「そうですね、お姉ちゃん」
早く帰りましょうか。と笑いかけるとお姉ちゃんもおう!っと元気よく返す。
「とりあえず今日の夕飯はハンバーグだなー」
「お姉ちゃんのハンバーグ、大好きです!!」
「おー、それはよかった!!チーズインハンバーグにしようかと思ってたんだ」
傘を差し並んで歩く帰り道。
いつまでも続けばいい。なんてらしくないことを考えた、次の瞬間、全身に激痛が走った。
「……ぇ」
視線をゆっくりと後ろの方へと向ける。目に映ったのは顔面蒼白の運転手。
轢かれたんだと気付くまで数秒の時を要した。
だんだんと意識が遠ざかっていく中、同じく隣で現状を把握したお姉ちゃんがこちらに手を伸ばすのがみえた。
お姉ちゃんも……なのになんで……っ。なんでそこまで私を守ろうとしてくれるのですか……
私の意識はそこで途絶えた。
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