標的48 ページ50
「おはよ、タマちゃん!!」
夏休みが明けた9月の初め。通学路を歩いていると後ろから声をかけられた。とても聞き覚えのある声に振り返ればセツちゃんがいる。
私は頬を緩ませ、おはようございますと挨拶し返した。
「今日から学校だねー。凄く憂鬱だわ」
夏休み延長しないかなぁ、例えば生徒が一斉にインフルエンザにかかるとかと息を吐くセツちゃんに私はそんなミラクル起こるわけないから、と心の中で突っ込みながらも苦笑いを零す。
「まあでも?会長に会えるから私としては嬉しいけど!!」
「……さっきの言葉と矛盾してませんか…?」
「気のせい気のせい。あ!そーいや今日、抜き打ちの持ち物検査をやるみたいだよねー。アレかな?二学期の始業式だからかな」
今チェックしなくては、とセツちゃんは持ち物を調べ始める。その隣で私は空を見上げた。とここで「その件についてだけど」という声がまたもや後ろから聞こえた。
「恭が空き地にたむろする不良共を成敗しに行っちゃってね、僕だけで持ち物検査をしてもいいんだけどこれから町の見回りで並中を留守にするから恭と話し合って今日の持ち物検査は中止にしたんだ」
だから普通に教室に向かいなよ、と言いながら背後から現れるお姉ちゃん。そんな彼女の登場にセツちゃんは目を輝かせた。
「会長!!そ、そうだったんですね!!頑張ってください!!」
「……あの、会長さん……怪我は出来るだけしないように、してくださいね」
「ん、ありがとう。約束はできないけど努力する」
だからそんな不安そうな顔しないで、とお姉ちゃんはポンポンと私の頭を撫でた。お姉ちゃん……人前でそれは少し恥ずかしい。
「それじゃあ行ってくるけど……揉め事は起こさないでね」
「あいあいさー!!わかってますよ会長!!!」
「い、行ってらっしゃい、会長さん!!」
ビシッと敬礼するセツちゃんにならって私もオロオロとしながらも敬礼した。……これ、結構恥ずかしい。
敬礼を決める私とセツちゃんにお姉ちゃんはクスッと笑みを零し背を向けて行ってしまった。ふわりと彼女の髪が靡く。
「……っはぁ〜〜〜〜っ。会長の髪、めっちゃ柔らかそうでいいなぁ」
「そ、そうですね……」
でも今のセリフ。もしセツちゃんではなく男子生徒が言ったら変態発言になるのでは……セツちゃん、女でよかったね。
「セツちゃん、教室行きましょうか」
「はいよー」
17人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ