標的34 ページ36
「……沢田珠代?」
「っ、会長…さん?」
学歴詐称により根津先生は解任された。彼は5流大卒なのにも関わらず東大と嘘吐いたのが原因らしい。自業自得である。
もちろん、お姉ちゃんからもらった和菓子はその日のうちに私とセツちゃんで二人で分けて食べた。とても美味しかったのでその内、お礼をしに行こうと思う。
マフラーについては許可書を書いてお姉ちゃんに出しておいた。これで風紀委員長さんに取られる心配はないだろう。
そのことにホッとしつつ、私は朝早くに図書室を訪れていた。理由は本の返却と借りに来たのだ。
図書委員に本を渡し返却日時を図書カードに記入する。その後にどの本を借りようか本棚をウロウロとしていると、お姉ちゃんとバッタリ遭遇した。
ここには図書委員がいるのでお姉ちゃんは生徒会長モードだ。……正直にいうと
なのでビクッと肩を揺らしてしまったのは仕方がないと思う。
「……なんでここに?」
「あ、いや……その、ほ、本を借りようと……」
「タマ、そんなに怯えなくて大丈夫だよ」
小声でこそっと話しかけて来るお姉ちゃん。その声音はいつも通りの優しいお姉ちゃんで私はいつのまにか力が入っていた肩をおろした。
「お姉ちゃんは……なんでここに?」
「気分転換に読書をしててね。もう少ししたら生徒会室に戻るよ」
「そう、なんですね……お仕事ご苦労様です」
「ん。タマにそう言ってもらえると疲れが吹っ飛ぶよ」
でもどうせなら、とお姉ちゃんは抱きしめてきた。お姉ちゃんと声が裏返る私にお姉ちゃんはしっと口に人差し指を当てる。
「静かに。ここには図書委員もいるんだから。死角になっているとはいえ、声は聞こえるんだからね」
「ゔ……すみません、お姉ちゃん」
だっていきなり抱きついて来るんだもの。驚きもするに決まってる。
「……あのお姉ちゃん。風紀委員長さんも学校にいるんですか?」
「ん?恭のこと?もちろん。なんせ、風紀委員長だからね。私と同じぐらいに登校してきてるよ。けど今は書類の整理をしてる」
「……お姉ちゃんも風紀委員長さんも忙しいのですね」
「まあね。……っとそろそろ時間だ。僕はそろそろ行くけどタマ、早く本を選んだら教室に戻りなよ?」
それじゃあね、と何度か頭を撫でた後、私から体を離すとそのまま図書室を後にした。
……あ、本選ばなきゃ。
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