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「おいタマちゃぁん。ちょっといいかな?」
「オレ達、金欠なんだよー。金かしてくれ!!」
「な?タマちゃんなら心優しいから貸してくれるよな!?」
今日も今日とて不良に絡まれる。こんなのは日常茶番劇だ。この人達はいつも私にお金を要求してくる。
「あ、いや……その、わ、私も……お金、今なく、てですね」
これは嘘だ。お金ならある。昨日、お母さんからお小遣いをもらったから。
けれどもし、お金があることを口に出してしまうと全て取られてしまう。せっかくもらったお小遣い、大切に使いたい。
俯いたまま、拒否すればああ"っと凄んでくる。ビクッと肩が揺れた。だって……彼らから怒気と殺気が入り混じったような気を放ってくるんだもの。怖い。
「そんな嘘、オレらに通用すっと思ってんのか!!」
「聞いたぜ!!昨日は小遣いの日だったらしいじゃねーか!!」
誰から?なんて聞かなくてもわかる。
お姉ちゃんだ。けれどお姉ちゃんがこの人達に言うはずがない。だってお姉ちゃんはわかりやすいほどに私を可愛がってくれる。
私が臆病で弱虫で泣き虫だから。
そうなると彼らは偶然耳に入ったのだろう。
この時ばかりはちょっと大好きなお姉ちゃんを恨めしく思う。
何も言えなくなった私は俯いていると、3階から飛び降りてきたお姉ちゃんが不良をコテンパンにしてくれた。
でも、いつも思う。いつも守ってくれるお姉ちゃんだけど、男と女の力の差は歴然。
だからその内、大怪我をしちゃうんじゃないかって。私のせいで。お姉ちゃんが怪我をするなんて嫌だ。
お姉ちゃん。と不安そうな顔をしてる私に気付いたお姉ちゃんは私の頭を撫でてくれた。
「大丈夫大丈夫。タマは僕が守るから」
だからそんな不安そうな顔をすんな。なんてニカッと笑いながらカッコいい台詞吐くお姉ちゃん。
……私が聞きたかったのはその言葉じゃないのに。
「……はい」
けれど意気地なしの私はただ頷くことしかできなかった。
「お、お姉ちゃん、…無理、だけはしないで、ください」
「おう!!」
そうだ。自分のお小遣いを使ってお姉ちゃんに何か買ってあげよう。いつも守ってくれるお姉ちゃんに、感謝の気持ちを込めて。
喜んでくれるといいな。……なんてこの時の私は浮かれていて気付かなかったのだ。不良の一人が憎悪を滲ませた表情を浮かべ私を睨んでいたことなど。
それに気付いたお姉ちゃんが目を細めて不良を見下ろしていたことなんて……
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