検索窓
今日:7 hit、昨日:1 hit、合計:23,704 hit

15. ページ15


.




そっとしといた方が良い、
なんて言うてはみたけど。



実際気になるもんは気になるし
だからこいつに連絡したわけやし。



リ「 電話してきたんはそっちのくせに
 そっとしといた方が良い、かぁ〜 」

河「 呑もう言ったんはお前やろ 」

リ「 まぁそうなんだけど…
 ……まだ、気にしてるんすか 」

河「 …… 」









俺ら芸人の中で、Aは特別な存在やった。

漫才劇場の殺伐とした空気の中、
Aだけはいつだって笑顔で仕事をしていた。


そんなAに惹かれる芸人は数しれず


俺も、そのうちのひとりやった。



呑み行ったり出かけたり
個別に仕事の相談をしてみたり

お互いの誕生日には、
ちょっと良いプレゼントを贈りあったり。



どんなことにも、
ころころ変わるその表情が可愛くて。









河「 そら、な。 」

リ「 あれはしゃあなしっす
 他の芸人でも、それこそ俺でも
 ゆず兄と同じようにしてたと思うし。 」

河「 それでも、あぁなったんは
 俺が首突っ込みすぎたからやねん 」

リ「 けどッ 」

河「 …ごめんなリリー、今日はもう
 帰ってくれるか? 」








酒で回らん頭を必死に動かして
それでもうまく言葉が出てこなくて







リ「 また、一緒に呑ませてください 」

河「 おん、 」

リ「 遅くに失礼しました 」

河「 …おん、ごめんな 」








外に出るリリーを見送って
残った缶ビールを飲み干す。







思い出さんように、記憶に触れないように
そっと奥に閉まっておいた出来事が
一気に溢れだしてきて。





缶ビールを潰す音も

鼻をすする音も

その記憶も。


刺さるように痛かった。



.

16_→←14.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (39 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
163人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ゆぽる | 作成日時:2022年7月20日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。