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「ねえ、A、今日話したいことがある。」
突然ジミンにそう言われて、ごくりと息を飲んだ。
真剣な顔。
自分がこの前ジミンに伝えたことを思い出す。
"もう待たせないから、いいよ?"
多分そのことだろう。
そう、もういいの。
これでいい、これが私の幸せなはず。
「仕事終わったら、休憩室3に来て」
『分かった』
最近ジミンがいないことがあって、父のところに行っていたのだろうかと思う。
ってことは、本格的に、婚約を進めるってことなのかな。
自分のことなのに、実感がなくて。
仕事中、パソコンを眺めてても、気を休めようとしても、ずっと考えてしまう。
いつかのようにあっという間に仕事が終わって、だけどすぐに行く勇気はまだ持てなくて、トイレに向かう。
メイクをし直して、髪型もちょっと直してみて、深呼吸をした。
鏡に映る私の眼は、濁っているように見えた。
ジミンと、幸せになるんだ。
自分に言い聞かせたのに特に理由はないと思う。
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休憩室に向かうと、すでにジミンはきていた。
『ごめん、遅くなった』
「大丈夫だよ」
ジミンの顔は、緊張しているように見えた。
それが移って、私も少し強張った。
「それで、話なんだけど。」
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やっぱり、Aのこともらうの、やめようかなって思うんだ」
『、、え、』
「色々考えてさ、やっぱり違うなって思って。」
その言葉に驚いて、目の前で嘘の笑顔を浮かべるジミンが分からなくて、ちょっと、ほんのちょっとだけほっとした自分がいて、だけれどやっぱり私って誰にも必要とされないのかなってそんなことを思ったりもして、
『なんで、?』
色々ぐるぐるしながらも、かろうじて呟いた。
ジミンの笑顔は悲しそうで、痛々しかった。
「A、自分でわかってるはずだよ。
自分が、本当は誰と幸せになりたいのか」
そう聞いて、思い当たることがある自分にどきりとした。
「自分に正直になって。僕だって、Aには幸せになって欲しいから。」
「Aが一緒にいたいのは?
諦められないのは?
傷ついても一緒にいたいって思うのは?
好きなのは、誰?」
それでも優しく笑うジミンへの罪悪感と、諦められない私の思いが溢れて、頬を濡らした。
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『じょん、、ぐく、、、』
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綺夢(プロフ) - chouさん» こちらこそお読みいただき本当にありがとうございました!! (2021年9月12日 2時) (レス) id: 5b84587f67 (このIDを非表示/違反報告)
綺夢(プロフ) - つぶあんさん» そんな、、嬉しいお言葉ありがとうございます!これからも是非楽しんでいただければと思います(^-^) (2021年9月12日 2時) (レス) id: 5b84587f67 (このIDを非表示/違反報告)
スア - ジミンシイィィィィィィィィィィィィィィィィイ (2021年9月6日 20時) (レス) id: ae78d82fdd (このIDを非表示/違反報告)
chou(プロフ) - 読みやすい文章で最後まで一気読みしてしまいました。素敵なお話、ありがとうございました。 (2021年9月5日 4時) (レス) id: 76ab41929e (このIDを非表示/違反報告)
つぶあん - 完結お疲れ様でした!綺夢さんの言葉選びが綺麗で、素敵で、尚且つスッと入ってくる感じで…なんというか、その………好きです(語彙力)これからも綺夢さんの作品楽しみにしてます! (2021年9月4日 19時) (レス) id: d632a1b7e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綺夢 | 作者ホームページ:https://twitter.com/ki5tm9?s=21
作成日時:2021年8月24日 2時