【ナツキスバル】風邪3 ページ36
手渡された器には、きれいに盛り付けられた卵粥。上に載せられた三つ葉がいい香りだ。
「まずは何よりもエネルギーつけねぇとな!」
にっかり笑う彼いわく自信作の卵粥は、とろとろ熱々。一口含めば、くどくない薄味の醤油に、控えめなみりんの甘さが舌全体に染み渡り、心も潤してくれる気がした。
なんて美味しいんだろう…
「美味しすぎる…」
「そりゃ良かった!
てか、風邪引いてても味ってわかるもんなのかぁ」
頬杖をついて嬉しそうに聞いてくれる彼に、愛しさを感じる。
「何よりも目の前の彼氏の優しさが一番の美味ですわ」
「それって味関係なくない!?」
茶化してしまったけど、本当に美味しかったんだ。料理だって上手になったし、性格も明るくなった。
彼は前と比べてかなり変わった。一度失踪して以来、特に。
「昴ってば、一回いなくなって帰ってきてから随分料理が上手になったよね。どっかで修行でもしてたの?」
「………、ん〜、教わってはいたけど…ま、色々あったんだよ」
そう言う彼の顔は寂しそうに見える。
昴は頑なに自身が行方不明だった時期の話をしたがらないのだ。恋人の私どころか、家族にまで。
流石の私も、踏み入っちゃいけない領域があるのだと弁えてはいる。恋人なんだから全部わかりあわなきゃ駄目、なんてことはない。言えないことくらい、誰でもある。彼は私の恋人である以前に、一人の人間なわけだし。
それに、こんなことで彼の気持ちを疑ったりはしない。現にこうして慌てて私を看病しに来てくれいるし。
「前の昴も、今の昴も、私は変わらず好きだよ」
「…恥ずかしいやつ…
────でも…、まぁ…俺も、好きだよ…Aのこと…」
複雑そうな顔は変わらない。でも好き。
そんなあなたが好き。
彼の腕が私の頬に伸びて、そっと顔を近づけた。
────『……………』
「……唇カッサカサ」
「うるせーやい、慌ててバイク飛ばしてきたんだからしょうがないだろ」
「ふふっ…風邪、移っちゃうね」
「俺馬鹿だから風邪引かない」
「あ、そっか」
「んだとコラァ!!」
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「」(プロフ) - 誰かナツキスバルのゆめしょ書いてよぉ…… (2022年9月24日 22時) (レス) id: 4fb2260fe5 (このIDを非表示/違反報告)
「」(プロフ) - 新しい話ができ次第、前作のエピソードを一つ消す予定です。 (2022年5月21日 15時) (レス) id: 4fb2260fe5 (このIDを非表示/違反報告)
「」(プロフ) - リアルのお仕事が死ぬほど忙しいです。 (2022年5月21日 15時) (レス) id: 4fb2260fe5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:「」 x他1人 | 作成日時:2021年9月15日 8時