【ナツキスバル】服(若干の過激表現あり) ページ10
娼婦の親に行為を見せつけられてから、性という概念が嫌いになった。あの行為中の恐ろしい絶叫を聞いてから、それは変わらないままAの心にあり続けた。
男も女も嫌い。人間として見られたい。ずっとそんな呪いを受けながら、生きている。
買い出しで王都まで出かけた先では季節の変わり目なのか、新しい服が続々と売り出されている。中には、自分の年頃ではぴったりなくらいの、少女的で可愛らしいものもある。
一際目を引くのは、白地でウエストの絞られた、清楚だがこれまた可愛らしい雰囲気のワンピースだった。ブレスレットスリーブの袖口は絞られていて、胸元には白いコサージュが輝いている。自分の好みにピッタリとはまりすぎるそれを、Aは凝視していた。
Aも一応は女の子だ。可愛い服には興味があるし、おしゃれに着飾ることに無頓着なわけではなかった。しかし、かわいい服は男に媚びてるのと同じなのでは、とふと考えて、目の前の服に思いを馳せるのを辞めた。
「おっ、何見てんの?」
「ぎゃっ」
いきなり後ろから声をかけられ、獣のような声が出る。
「えっ、そんなに驚く?なんか変なものでも見てたん?」
この妙に気安く話しかけてくる男は、Aが所属するエミリア陣営の使用人、スバルだ。Aが密かに好意を持っている人物でもある。
「べ、べつに!!……何も見てないよ」
慌ててさっきまでの雰囲気を隠し、ぶっきらぼうに言葉を紡げば、頭の軽そうな癖に、妙に感の良いこの男に何をしていたのかが勘付かれたようだった。
「おおっ、さてはこの服が気になってるんだな?」
からかわれる。
そう思って慌てて先を急ぐように言葉を発しようとした。
しかし、
「いいじゃん、きっと似合うぜ」
そう、優しい笑顔で言われてしまえば、何も考えられなくなった…。
帰りの竜車の中。夕日に照らされ眠りこけるスバルの隣で、一人悶々としていた。
やってしまった…。自分の中で、禁忌としていたそれを
「買っちゃった…」
例のワンピースだ。すげーかわいい。買ったのがバレないように手持ちのバッグに無理やり詰めてはしまったが。
こんなかわいい服が似合うなんて、それも想いを寄せる相手にそんなことを言われたら…。
「(一回だけ…一回だけ着てみよう。それで今後も着るかどうかは判断しよう…!!)」
22人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:「」 x他1人 | 作成日時:2021年4月16日 22時