【レム】失明(病、悲) ページ8
暗い…
ぼんやりと見える世界はそこまで不便ではないと思っていた。ある日を境に謎の奇病に罹ってから、日に日に悪化していく視力に、陣営のみんなは困惑し、私自身も多少の恐怖は感じていたが、それまでは大したこととは思わなかった。色が見えればそれでいいと。
だが、たった今目覚めてみれば、それもほとんど見えなくなっている。明るい場所なら比較的よく見えていた眼も、そろそろ終わりを迎えようとしているのだろうか。
「おはようございます。Aちゃん。」
小鳥のような可愛らしい声がベッドサイドから聞こえる。むくりと半身だけ起き上がり、声のする方向に手を伸ばした。
「おはよう。……これは……レムかな…?」
輪郭を確かめるように暫く彼女を触れば、どうやら驚いている様子だった。いつもなら色は見えているから、触らないと姉妹のどちらか分からないほどになっていることに気がついたのだろう。
(きっと驚いているレムも可愛いだろうな。)
それが見られないのがとても惜しくて。
「Aちゃん…まさか、眼が………!!」
震える声で私を呼びながら彼女の頬に当てている手を握ってくれる。生温かいものが手に触れたことで、彼女が泣いていることが分かった。
レムは、私が病に罹ってから、誰よりもずっと私を心配して常にそばにいてくれた。大切な人を泣かせてしまったことは悲しかったが、病に罹ったことで常に彼女の心に私が在り続けることがこの上なく嬉しかった。
私はレムを感じ取る器官を一つ、遅かれ早かれ完全に失うのだろう。だが、その足りなくなってしまう分をレムにより感じ取ってもらえるのではないかと、密かに喜んでもいる。とんでもないエゴだ。自覚がある。でも、もうそう思わずにはいられない。誰よりも深く愛される喜びをを知ってしまったから。
「Aちゃん…私が…レムが…なんとかしてみせますから………だから……」
悲しみに顔を俯ける彼女を前に、私は優しい微笑みを向けた。
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作者名:「」 x他1人 | 作成日時:2021年4月16日 22時