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【ナツキスバル】服5 ページ14

今後はこんな服は絶対に着ない。

屋敷へ帰れば、薄暗くなった部屋で一人でそう呟いていた。

そう決めて、でも捨てられないこの服をどうしたものか。
一人で悩み続けているAの耳に、小さなノックが聞こえた。



「私だけど、A、帰ってる?
怪我をしたって聞いたから、治しに来たんだけど…」

凛とした銀鈴の声。エミリアだ。

「居ますよ。どうぞ」

エミリアはそっと扉を開けて顔だけ覗かせてから、部屋に入ってきた。

「もう、いつも言ってるでしょ。そんなにかしこまらなくてもいいのに。
ほら、ほっぺたに怪我してるんでしょ?見せて」

頬をぷくっと膨らませて、エミリアは言う。

控えめだが可愛らしい彼女の姿に、荒んでいた心が癒やされる。
そんなエミリアを見て、ふと思いついた。彼女ならこの服も似合うのではないか。貰い手が彼女なら、この服も大切にしてくれるだろうし、美しい彼女のことだ。必ずこの服も似合うだろう。

それに、彼女は………エミリアはスバルの想い人だから…。

「そんなことより、エミリア様。この服、自分で買ってしまったものなのですが、大きさを間違えてしまいまして…
エミリア様ならば、大きさも合うのではないかと思うのですが、もらっていただけませんか?
私物で申し訳ございませんが、きっとお似合いになると思いますよ。」

「えっ、いいの?こんなに可愛い服…」

「構いません。私には他にも着るものがあるので」

「そうなの?
なら、ありがたくもらおうかな。
ありがとう。すごーく嬉しい!」

蕩けるような笑顔に、心底、これで良かったのだと思わされた。


次の日から、早速エミリアはその服を着てくれていた。とても似合う。私の見込んだ通りだった。
やはり、あの服は、私なんかが手を出していいものではなかったのだ。
そう思って、少女の自分に蓋をした。

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作者名:「」 x他1人 | 作成日時:2021年4月16日 22時

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