道外れた歯車 ページ24
雄英高校。
平日なので、生徒の声が微かに聞こえる。
授業中で良かった。
先生と母は先に来ているはず。
目指すは校長室。
冷たい廊下を、背筋を伸ばし歩いていく。
「藤丸少女！」
聞き覚えのある声。そして、その名前の呼び方。
オールマイトさんだ。
私は後ろを振り返った。
そうだ。この人は聖杯を使ったことがあるから、天の衣の力が効いていないんだ。
「父…一さんは大丈夫かい？というか、藤丸少女も！なんか、皆から忘れられてるみたいだからさ……。相澤くんは覚えてるみたいだけど、さっき普通に忙しいからって無視されたし！」
「その話しの真相が知りたければ、一緒に来ますか？校長室に。」
驚いた顔をしたが、コクリと頷いた。
少しだけ、校長室への足取りが軽くなった気がする。
「失礼します。遅れてしまい申し訳ありません。」
「大丈夫だよ、大人だけの話しもあったからね。」
「なんでオールマイトさんを連れてきたんだ？」
「現状を知りたいみたいなので。……記憶が消えてる真相を。」
座って、と校長から言われたので遠慮なく座る。
この様子だと、校長も記憶がない。けど、父に娘がいるということは知っているのか、私の存在を不思議そうには見ていない。
「制服を着ているってことはやっぱりこの学校の生徒なんだね。忘れてしまって申し訳ない。」
「いえ。私が記憶を消したのですから気にしないでください。なにかと校長先生にお世話になってきた身。先生が不便でしたら、記憶をお戻しします。」
「そうしてくれるのなら…そうしていただきたい。」
私は異空間から天の衣からもらった貴重な装置を出す。
確か、なにか呪文があった気がするんだけど……。
思い出せない……。
「おい大丈夫か。」
「呪文が思い出せない……。」
「……“運命の歯車よ、我が介入せし行なった道外れた
一緒にいただけはあるね！
良かった良かった！
しかし私が呪文を唱える前に装置が光始める。
え、先生の呪文で反応した？
眩しい光を放ち、装置はキラキラと消えていった。
そして、校長先生の記憶は戻っていた。
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作者名：マリア | 作成日時：2022年7月22日 22時
