落としもの ページ11
「何かが、足りない気がする。」
「え！？まさか魔力が尽きたのお父さん？！」
「違う。なにか違和感を感じるんだ。我々は本来通りの運命から外れている。それで、普通に彼女を倒せるのか？」
確かに、黒聖杯に攻撃が当たっているが……一向に彼女が倒れる気配はない。
もしかして、彼女を倒せるサーヴァントがいるの？
そのサーヴァントじゃないと無理なのかしら？
そんな時だった。
黒聖杯の攻撃によって起きた強烈な風。今にでも飛ばされそうなぐらい、強い…。
体が宙に浮いた。
「立香……！」
「っ……！」
「先生？！」
私の手を掴んで、一緒に宙を舞う。
先生からなにか落ちていったように見えた。
「何か落ちましたけど！いいんですか！」
「そんな心配、今してる場合か！」
キラキラと輝く落ちたものが、妙に気になる。
その落ちたものは、父めがけて落ちていく。
あれ、ぶつかるのでは？？
「……！(俺の魔力？何だこれは。)」
あ、気づいたみたい。
父が拾った瞬間。眩い光を放つ。
＿＿＿＿問おう。あなたが私のマスターか。
「アルトリア……？！」
そこに現れたのはあの騎士王で。
アルトリア・ペンドラゴン
そう、父のサーヴァント。
ぼうっとしているうちに、私達は落ちてきている。
風は止み、私達を浮かばせるものなどない。
後は落ちるのみ。
いゃ、死ぬだろ。どう考えても。
「藤丸、少しだけ我慢してくれ。」
「え？」
そう先生が言い放った途端、グッと私達の距離が縮まる。
待て待て待て！これは、明らかに……先生が助からんだろ！
この人、自分がクッション代わりになろうとしている。
強く後ろに回された腕。それが解けるわけなく。
低いところから落ちるならともかく、高いところからは確実に死ぬ。
衝撃が大きくて、命が助かる保証なんてない。
そうだ、サーヴァントを呼ぼう。
まだ間に合う。
「お願い！エルキドゥ！！」
地面スレスレ。
鎖に巻かれ、私達はわずかに宙に浮いている。
「間に合って良かった……。」
そっと地面に落ちる。
先生の上に乗ってる私は直ぐに退き、先生に説教を始めた。
「アホですか！！先生が…先生が死んじゃったら……私……。」
自分の色んな気持ちが溢れてくる。
私の…知らない気持ち。
＿＿＿＿ずっと前から…
その瞬間。
私の脳に、大量の記憶が流れてきた。
私の、落しもの。
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作者名：マリア | 作成日時：2022年7月22日 22時
