Sparkle Ⅱ (ページ37)

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「これも食べな」

「ちょっと、もういいってば。自分のところにも乗せなよ」

年が明けて少し落ちついた頃Aと二人、約束していた焼肉を食べに来た。一枚肉を食べて「美味しい！」と目を輝かせたAに嬉しくてつい世話を焼いてしまった。

少し前まではAが肉と白米を美味しそうに食べる姿なんて想像さえできなかったから、食べれるだけ食べてほしいと思ってしまう。

Aが再契約のことで事務所と揉めていた頃「事務所を見捨てるのか」だの「恩を仇で返すのか」と散々言われたみたいで、メンバーどころかスタッフさんからも冷たい対応を取られていたらしく、気づいたらご飯が喉を通らなくなっていたみたいだった。

こういうとき無理に食べろというのも、圧をかけてしまって余計食べてくれなくなると分かっていたから、Aのペースでいいと思っていたけど、日に日に痩せてげっそりとしていくAを見るのは堪えるものがあった。

「美味しい？」

「うん、でももうお腹いっぱいになってきた」

「もういいの？」

「アイス食べたい」

「アイスって……」

既にメニューを見ながら「アイス頼んでもいい？」なんて可愛らしく聞かれてしまえば、いいよと言うしかなくてどれにしようかな、と悩んでいる姿を眺めた。

アイスなんて、と呆れたものの、甘いものさえ食べなかったのに、少しずつ良くなってきていると思えばそれは嬉しいことで、後で頼んだアイスでも一口もらおうかな、なんて考える。

あの時のAを思い出すだけでも辛くなる。かなり早い段階で再契約の話し合いをしていたみたいで、一方ではグループから消えろと言われて、一方ではお金のために地位のためにAへプレッシャーをかけるような言葉を使って引き留められる。

会いに行くといつも目を真っ赤にさせているAを慰めてあげるのが僕の役目だった。気づけばAはとっくにいっぱいいっぱいになっていて「いっそのこと死んでしまいたい」とAがこぼしたのだ。それだけはダメだと思うも、どうやって声をかけるのが正解なのか分からなくて結局口から出たのは呪いのような言葉だったわけだけど。

「僕のために生きてよ」

Aは大きな目を見開いて、俯き少し黙ったあと「スンミニが言うなら、スンミニのために生きる」と涙声のまま言ったのだった。

“僕のために生きる”と約束したからご飯も食べるし、睡眠を取る、という生活をしていたAがお腹が空いたから食べる、眠いから寝る、と自分のためにするようになったのが嬉しく感じつつも少しだけ寂しく感じた。