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「ちゃんと、言わなきゃと思って。でも、Aに話させないようにするから。そこはお願いするから……」
オンニはそう言って、本当にごめんねと私の手を握って一度ハグをしてから帰る準備を始めていた。私は何も言えることなくただそれを見つめて、帰るね、と言ったオンニを見送った。
告発、なんて、してしまえば私はきっと“可哀想な子”として世間からも、業界からも思われてしまうだろう。オンニはもう表舞台に立つ人じゃないから良いだろうけど、私は、今でもそっち側にいるというのに。
でも、それを簡単に言えないのは、私よりもオンニが苦しんでいたのを知っているからで、私はどうするべきなのか分からなかった。
「……スンミナ」
オンニが帰ってからしばらくぼうっとしていて、なんとなく付けたテレビは気づけばニュースになっていた。そんな時、電話がかかってきて名前を見るとスンミニでまだ頭の整理がつかないまま電話に出てしまった。
「スンミナ、今どこ……？」
「え、今？今は宿舎だけど……何かあった？」
「……あった」
多分、またここで何もないと言ってしまえばスンミニを怒らせるだろうから素直に言うと「え」なんてスンミニの驚いた声が聞こえて、こっちも「え？」なんで返してしまった。
「ごめん、Aが素直だから……それで、何があったの」
「…………」
「A？……会いに、行った方がいい？」
「……ぅ、スンミナぁ……わたし、どうしたらいいか、分かんないっ……」
今日あったことを話したいし、スンミニに会いにも来てほしいのに、あんまり会わない方がいいって二人で決めたからすぐ「会いに来て」ともいえなくて、どうしたらいいか分からない。
考えなきゃいけないことがたくさんで、頭がパンクしそうだった。オンニは私に話をさせないようにする、と言っていたけど絶対に私のところにも来るだろうし、オンニがそう言ったから大丈夫と放置しておくわけにもいかない。
「……A、今からそっち行くから待ってて。いい？」
「いいの……？」
「ちょっと待って」
急にスンミニの声も空気清浄機やらエアコンの音やらも聞こえなくなって、どうしたんだろう、と思っていたら「お待たせ」とスンミニが言ってすぐに戻ってきていた。
「明日練習午後からだから。いい子にして待ってて」
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作者名：さとう | 作成日時：2024年2月23日 21時
