- ページ15
.
「……A、だよね」
「うん」
「A……」
「ふふ、うん」
スンミニが帰ってきてから少し、電話をしたいと言ってそれからカメラをつけた。
スンミニは大きく口を開けて「本当に？」と驚いていた。本当だよ、と言うとすぐに目を細めて口もとに手をあてて笑いながら「かわいいね、よく似合ってる」と言ってくれて嬉しい。
「これがびっくりすること？」
「そうだよ。初めてブリーチしたの。痛かった……」
「A弱そう」
「どういうこと？」
頭皮弱そう、と笑ったスンミニにこれは絶対に馬鹿にされてると思ってカメラをきると「ごめんってば」と未だに笑いながら言われて仕方なく付け直した。
「そういえばびっくりしたよ。フィリックスくん私と同じなんだね」
「あ、見た？うん。そうだよ」
インスタを開いたとき、フォローしていたルイヴィトンのアカウントからフィリックスくんの写真が何枚か上がっていて驚いた。
これが少し前に言っていた「びっくりするかもね」ということの正体だったのか、とすぐに分かった。
「お土産買ってきたからどこかのタイミングで渡すね」
「うん。待ってるね」
お風呂上がりなのか髪がいつもよりふわふわしていて、しかもちょっと色落ちしてるのか真っ黒というわけじゃなくて茶色っぽくなっててかわいい。
「あ、スンミナ、今度部屋紹介することになっちゃって、寝室においてあるのと、念の為リビングとかその他のちょっとまとめてクローゼットしまっちゃうね」
「その後ちゃんと出してよね」
「うん、分かってるよ」
スンミニと離れると決めた時、一度荷物をまとめたはいいものの結局返すことができなくて、そのままになっていた。この前スンミニが来てくれたときにそれが見つかって「本当に信じられない」と怒られたばかりだった。
スンミニの前でまとめた荷物を一つずつ取り出して置いてあった場所を思い出しながら片すことで、どうにか許してもらえたみたいで。
スンミニは宿舎暮らしだから、私のものなんて置いておくわけにもいかず、よく私の家にきていたから当然私の家にスンミニのものが増えていくわけで、いつかここに越してくるんじゃないかという勢いで今も尚増えている。
「……それ、僕のじゃん」
「あぁ……寂しいから、たまに着てるの」
今日たまたま着てたのは、あの日スンミニに貰った服だった。
スンミニはしばらく黙ったあと、はあ、と息をこぼしてじいっと私を見つめるから、私もよく分からないままスンミニのことを見ていると「悪い子だ」と言うから余計わけが分からなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 653人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さとう | 作成日時：2024年2月23日 21時
