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you side
「私は…」
私はどうしたいのだろう。どうなりたいのだろう。いつもいつもその場で流されてしまう。
その方が楽で心地がいいから。だけど、いつか見えない壁にぶち当たって1人で深く沈んでいく。
ぐるぐると頭の中が色々な思考と感情に塗れていく。
ずっと昔から喉が出るほど欲しいものがある。それの為ならば私はなんだってする。なのに、それは私の目の前に現れてくれない。
私がずっと欲しくて欲しくて堪らないものはこの世に一つしかないもので、他の誰にも渡すことが出来ない。
「私は…私は、本物が欲しいよ」
言葉だけ。身体だけ。そんなものに意味は無い。代わりなんて腐るほどあるものに価値なんてない。
上辺だけの関係性も、それを宝物のようにしているあの人達も私にしちゃ価値はない。
それなのに。そう頭で理解しているのに私はそれがとてもとても羨ましくて、妬ましい。
馴れ合いなんて、同情なんて、ずっと昔から嫌いだった。それは今も変わることは無いと思っていたのに。
私の手を握る熱は優しくて心地よくて離れるのが名残惜しいとすら思ってしまっている。
「俺がお前に本物ってやつあげるから」
この先の言葉を聞いていいのだろうか。私はそれを望んでいるのだろうか。
それを受け止めて飲み込むことが出来るのだろうか。
三ツ谷の手の熱が頬に変わる。大きな目が私を射抜くように見つめる。心臓が慣れない速度で動く。それは涙が出るほど痛い。
「俺と付き合ってくれませんか」
差し出された三ツ谷の手を握れば私は幸せになれるんだろう。その幸せは絵に書いたような幸せで私が昔から憧れていたものに違いない。
こんな私でも彼は受け入れて傍に居てくれると言ってくれた。ずっと、甘え続けてきたのにまだ甘え続けてしまうのかと突っかかる。
「私、三ツ谷に幸せになって欲しいんだよ、?」
「知ってる」
「じゃあなんで…」
「お前と幸せになりたいから」
君はいつも狡い。
私が欲しい言葉を欲しいタイミングで言ってくれる。それがどれほど心を軽くするのか知ってるのだろうか。
今更私が何を言ったって三ツ谷の意志を曲げることなんて出来ない。
「もう三ツ谷に甘えないって決めてたのに」
「それは無理だろ」
「そうだね」
だったら私は君と幸せになるって言う道を喜んで選ぶ。
三ツ谷の手に触れようとした時閉じ込めていた記憶の一雫が溢れた。
「お前はね、俺と一緒で酔えないよ。絶対」
蘭の言葉が頭の中に響いた。
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うさ - 更新楽しみです! (1月19日 16時) (レス) @page9 id: f5f3f838b8 (このIDを非表示/違反報告)
ttakedasaki0906(プロフ) - 更新楽しみに待ってます!!! (2022年11月8日 15時) (レス) @page9 id: 668cdece5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かか | 作成日時:2022年4月14日 20時