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「お疲れ様でした」
「ん、お疲れ」
煙草を吸いながらCDを片付けている店長に背を向けて店裏から出ていく。
じめじめした小雨が降っている。天気予報では降水確率は30%だったのに。
なんだか最近驚かされることばかり起きる。家からそう遠くない小走りでもすればそんなに濡れなくても済むだろう。
そう思い歩き出した途端小雨から大粒の雨に切り替わった。
ザァーと、雨粒が地面を叩く音が響き渡る。私の体に容赦なく降り注ぐ雨。
行き交う人々が小さな悲鳴をあげて走り去っていく。その波に置いて行かれて1人土砂降りの中雨宿り先を探す。
(最悪、小町起きてるかな)
住宅街に雨宿りするところなんて無くて諦めてこのまま帰るか引き返そうとした時背後から声をかけられる。
「おい！」
「っ、はい、？」
腕を掴まれて前のめりになって転けそうになる。今日は店に来なかった彼が私の目の前にいた。
「女が1人で雨ん中なにしてんの？！びしょ濡れじゃん」
風の低い音が鳴いた。それと同時に私の髪と彼の髪が靡く。
私じゃない髪色。金髪みたいなよく分からない明るい髪色。ふわふわな髪が舞ってるみたいに揺れ動く。
彼のさしているビニール傘に雨が強く打ち付けてやけにうるさいその耳障りな音。
「これからもっと降んぞ」
「え、そうなんですか」
この異様な空間はなんなんだろうか。心臓がドクドクと嫌に身体中で鳴る。
どうしてこの人は私に声をかけたのだろうか。掴まれた腕は雨で熱を奪ったというのに掴まれた部分だけこの人の熱が移っている。
「あっ！！」
「え、なに」
ふと思い出した。洗濯物を干しっぱなしだということに。
小町が取り込んでくれているかもしれないけど部活で疲れているだろうしその可能性はゼロに等しい。
「せ、洗濯物が…」
「は？」
「ごめんなさい、直ぐに帰らなきゃいけないんです！」
「ちょ、おい！待てよ！」
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作者名：かか | 作成日時：2022年5月2日 23時
