ハッフルパフの彼 ページ9
学期末ももうすぐ。
ほとんどの学生がテストから開放されてホグズミードに行っているものの、私は気がのらなくてお城の薔薇園にいた。
ベンチに座りながら、薔薇の香りがする温室にいるのは、楽園ともいえよう。
一回深呼吸をするようにバラの香りをいっぱいにすいこんで、持ってきた小説を読み始めた。
数十ページ進んだところで、反対側にある温室の扉が開く音がする。
足音からして一人、どうもまっすぐ私のほうに向かってきている気がする。
本から目を放し、顔を上げれば薔薇のアーチから出てくるセドリック。
『あら、セドリック。
お久しぶりですね』
長らく見なかった彼は、また少し大きくなったようで、私との身長差が開いているように感じた。
「うん、久しぶり。
今年もスリザリンはハッフルパフとはあまり接点がなかったからね。」
彼は前のようにお日様のように暖かな笑顔を向けた。
そもそも同学年でも接点が少ないのだから、学年が違えば尚更である。
「それで、今年の夏休みだけど、もしよかったらうちに来ないかい？
もちろん、レギュラスも一緒に。
クィディッチの大会のチケットをもらってね、一緒にどうかなって思って。」
向かいに置いてあるベンチに腰掛け、彼は足を組みそう言った。
温室のガラスの屋根から降り注ぐ太陽の光が彼の茶髪を輝かせる。
『えぇ、ぜひ。』
自然と顔がほころぶのを感じ、それにこたえるようにセドリックも微笑み返してくれる。
「なら、夏休みの間に手紙を書くよ。
本を読むのを邪魔するのは悪いから、僕はこれで。」
すっと立って、彼は薔薇の向こう側へと消えていく。
私は本と目を閉じ、ゆっくりと息を吐いた。
暖かな日差しが私を照らす。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2017年9月8日 7時
