仮死 ページ22
ーハリー視点ー
『ハリー、ハリー。
そろそろ目を覚ましたらどうですか』
ずいぶん時間がたっているのか、それとも全く時間がたっていないのか。
僕はよくわからないまま上体を起こした。
かたい大理石らしい床の上に寝ていたのに体は痛くない。
どころか無数にあった切り傷や打撲も一切ない。
声をかけてきたのはAだった。
あぁ、そうか。
僕はヴォルデモートの手によって殺されたのだから、死んだAがいるのは…当然なのかもしれない。
ゆっくりと上を見上げると、無限の高さの天井が広がっていて、なおかつ大きなシャンデリアがあること、そして上はステンドガラスから日が射していることがわかる。
不思議な夢のような感覚だ。
「ハリー。」
もう一つ、よく知った声が聞こえてきた。
ダンブルドア先生。
流れるような濃紺のローブをまとい、老いを感じさせない姿勢、そして子供のような軽快な足取りでやってきた。
『あらあら、先生まで呼ばれたんですか?』
「呼ばれた、というよりも、作り出されたといったほうが適切ではないだろうかな、Aさん。」
朗らかな笑みを浮かべた校長は僕とAを交互に見た。
孫が家にやってきてうれしいおじいさんのような表情だ。
「作り出された、というと…
Aや先生は死んでいる。そして、僕も死んでいる?」
「あぁ…死んでいるかいないか、それが問題だというわけかの。
全体としてみれば、ハリーよ、わしは違うと思うぞ。
もちろんAさんも、少し違うのじゃ。」
「違う?」
「ハリー、おぬしはもうわかっているはずじゃよ。
確かにヴォルデモート卿に死の呪いで殺された。
でも、思い出してみるとよい、ヴォルデモート卿の体がどのように復活したのかを。」
白い靄のような何かの上を歩き、僕たちは唐突に出てきた白いテーブル席に座ることにした。
いまだに目が痛いほどに白いのに、同時に天井からはステンドガラスを通って暖かい色が射しこんできている。
63人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あやにゃん(プロフ) - ベルモットさん» ベルモット様、コメントありがとうございます。 話の筋は一緒でも、結構映画版と原作で違ってきますよね〜 それに原作でも言語で印象がかなり変わってくるので面白いところです(´˘`*) (2020年12月28日 19時) (レス) id: 64c80b7f49 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - 死の秘宝を読みはじめました。近頃、原作を読んで気がついたところが、映画と原作の中で違いがあったり、映画オリジナルである部分もあったり、と見返して見ると考え深いですよね。 (2020年12月28日 4時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あやにゃん | 作成日時:2020年11月20日 2時