初日 ページ50
朝、いつもと違う寝心地のベッドに違和感を感じてパチリと目が開く。
寮にある学生のベッドとも、家のベッドとも違うそれは…なんだかあまり寝心地はいいとは言えない。固めのマットレスのスプリングがぎしりとなるのに小さく苛立ちを感じた。
全く、忙しいし寝不足だしで疲れているからそんなことで気を煩わせたくないのに。
大きくため息をついて枕下の杖を握った。
Aの家にいた時はいつもベッド脇の机に置いていたものの、今はすぐに手に取れる場所にあった方がいい。特にこの部屋にはまだ大した防御を張っているわけでもないし、僕が敵なら疲れて寝ているところを襲うからだ。
大きなガラスがはめ込まれた窓を杖で開けさせれば冷たい風が舞い込んでくる。
水平線の向こう側がしらんでいるところからして６時ごろか。授業が始まるまで十分すぎるほど時間がある。
いつの日か見たマグル界のスポーツ、新体操のリボンのように優雅にクローゼットに杖をふる。
黒いシャツにワインレッドのスリーピーススーツ。ローブは…濃いグレーにしておこう。
全て別の形だと選ぶのが面倒くさいので、全て色違いのスーツの中から今日の気分の色を選ぶ。
生徒は何も考えずに制服を着ていられるから楽であるけれど、先生はそうはいかない。同じデザインのものを着続けていれば洗っているのだろうかと噂がたつし、逆に全く違うデザインであればそれはそれでころころと服がうるさい先生だと言われるのが関の山なのである。
そのため僕は同じ形でダークトーンのスーツを１０種類ほど作らせたのだ。そしてシャツを黒白数枚ずつ。
動く気になってきた体をベッドから離してシャツの袖に手を通す。
肌と擦れあってしゅるりと音を立てる。
今日は１時間目から防衛術。
７年生か。
壁に貼られた大きな時間割の羊皮紙をチラリと見て、今度は杖を本棚に向けた。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2020年5月5日 2時
