教員 ページ48
緊張感がかけらもないもはや朗らかなコンパートメントを出て、僕は出口付近に立ってホグワーツ城につくのを待っていた。
いつもとは違う立場で、普段は羽織らないAの瞳と同じような赤のマントで…それだけで圧迫されるような不快な何かに襲われる。
駅に着けば、外はもう暗くなり始めている。
ハグリッドが一年生を誘導する声を後ろに聞きながら馬車へと急いだ。
大きな六人乗りのそれを引くセストラルの頭をするりと撫でて一人乗り込む。勝手に走り出して、僕の髪の毛が風に揺られる。そろそろ髪の毛を切らないと…
城では待ち構えていたセブルス先輩が僕を防衛術のあの部屋に案内した。
ここに通されたということは、僕もあと一年の命かもしれないなと不思議と笑ってしまった。セブルス先輩は気味が悪そうに僕のことを訝しげに睨んで、荷物を置いて一息ついたら大広間に来いとだけ言い残して去っていった。
はぁ。
すでに運び込まれている、屋敷の自室にあったソファーに埋もれるように座り込めば大きなため息が漏れ出た。
マントの内ポケットに入っている杖を右手でのろりと取り出して、アタッシュケースを２回叩いた。
コツコツと軽い音ががらんどうの部屋に響いて、中から貴重品やら服やらが一斉に飛び出して定位置に戻っていく。
消えていく荷物を細めで見ながら大きく深呼吸をしてゆるんだネクタイを締め直し、服についてしまったシワを杖でなぞって消した。
ーーーーーー
大広間には半数ほどの生徒がすでに座っていた。
中でも多いのはスリザリン生のようだ。
そこからチラチラと注がれる視線のような、好奇心のようなそれは僕に突き刺さる。何でレギュラスあんな格好しているのだろう、あれ先輩じゃないだろうかとか。
「マクゴナガル先生、僕はどこへ座ればよろしいでしょうか」
いつもの深い緑のハットをかぶって、でも表情は疲れている彼女は僕の姿を見て数度瞬きをした。
そうか、今まで学校にいるときはもう少し細身で低かったから大人の姿に慣れていないのか。
「え、えぇMr…いえ、ブラック先生…防衛術の先生は今年は校長の右側にと」
向かって左の席をさした彼女は少しばかり動揺を見せてそう答えた。
声がいつもより高く、震えていた。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2020年5月5日 2時
