子 ページ43
大きな屋敷を見上げたセドリックはここでやるのかと、小さく呟いた。
無理もない。一見すればただの良家のお屋敷だ。庭の整備は未だ行き届いているし、運が良ければ白い孔雀の散歩も見られるような極々のんびりとした印象を与える場所である。
内装といる人物が物騒なだけ。
入り口の門に手を触れさせればピリリとした痛みが胸の印に走って結界は解かれる。
死喰い人の印に反応して開くように作られているので、セドリックは単独でここにこられない。まぁ、くる必要もないとは思うけれど…と彼に伝えておけば、離れる事はないと思うけど頭に入れておくねと答えた。
玄関を通って、横のリビングのような、もはやホールにセドリックを置いていく。
ちらほらと他の死喰い人の影が見える。会議には参加できないけれどいち早く決まった方針を聞いて手柄をあげたい、そんな野心が多い奴らばかりである。
現に幹部である私が連れてきた彼を睨みつける視線が飛び交っていた。
『おとなしくしていなさいね、エルネスト。』
「もちろんです、お嬢様。
会議、頑張ってくださいませ。」
わざとらしくそう言っておけばわざわざ絡みにくる輩はいないだろう。
いたとしたら幹部の可愛い
ホールを後にして、会議が行われる部屋を目指す。
長い木のテーブルは相変わらず真っ黒で、それが元々なのか血が染み込んだからなのかは知らないけれど、何だか禍々しい。
そこにはまだたくさんの人は集まっていない。
ベラさん、シシーさん、ドラコにルシウスさん。
後２、３人、末席に近いのがいた。
『…ベラさん…もしかして？』
何だか彼女から感じる魔力の違和感に挨拶を忘れて話しかけてしまう。
いつものリボンや紐で締め上げるような服は着ていなくて、私と同じように少しゆったりとした服を着ている。
そうか、もうこの時期には…
嬉しそうに笑って、お腹に手を当てた彼女は誰との子供かは言及しなかったが、子供ができたとそう言った。
この後に及んで彼女の正式な旦那であるロドルファス・レストレンジと子をなすとは思えない。
よって、話の筋の通り、今やこの世界を征服していると言っても過言ではないあの人との間にできた子なのだろう。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2020年5月5日 2時
