吸血鬼３ ページ40
『気分は、いかがですかセドリック』
彼の血をいくばくかいただいて、その代わりに私の血を彼に飲ませる。
毒が回ったのかソファーに沈み込んだ彼は荒い息をしながらそのまま一日近く眠り込んでいたのだ。
掃除を終わらせて、電気をつけて…家具は昔のをきれいに直しておいた。シユウみたいに裁縫は得意ではないけれど…それなりには寝られるだろう。
体にかかっているウールの毛布をぺらりとめくって、彼はゆっくりと起き上がった。
「不思議な気分、かな。
力が溢れるような、脆いような。」
まだ外では日が照っているからか、少し体に不調が出ているようだ。
『まずはその体に慣れるところからですね。
多分、それ自体はそこまで時間はかからないのですが…』
体が馴染んでも次は力に慣れる必要がある。
彼の変化を見るからして、物理能力が大幅に上がっているように思える。
何かを持つにしろ力加減をおぼえないと…
グシャ
彼が飲もうと持ち上げたグラスが無残に砕け散った。
「…レパロ」
ローテーブルに置いておいた杖を恐る恐るつまみ上げて、小さく修復呪文を唱えた彼は、簡単に壊れてしまったグラスを茫然と眺めていた。
ーーーーーー
３日もすれば彼は力加減もマスターしたようで(咄嗟の時は危ういけれど)、普通の人間と遜色ない体の使い方をマスターしていた。
やはり、というか、純血の吸血鬼の"一部”を持っていないから当然なのだけれど、彼は固有魔法を持っていなかったようだ。私のように少なくとも魔法を防げるような盾が使えたら良かったのだけど…
となれば防御の手段が一つもないに等しいので、次はそこの対策をしていこうという方針である。
「普通に、地形操作とかなら威力は弱められそうだけど」
『まぁ…ただ破られると二次被害に遭う上に、発動がにそこそこ時間かかるんですよ。』
できないことはないけれど、場所によって地面や岩の性質も変わってくるので少々難しい場合が多い。
地層的に硬めであればいいけれど、粘土質のような地面では周りに建物がある場合倒壊してしまったりと二次被害が多いのである。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2020年5月5日 2時
