吸血鬼２ ページ39
吸血鬼。
吸血鬼を増やすにはいくつかの方法がある。
一つは臓器移植。
私が、お父様の心臓を持っているように。
大体は腎臓や肝臓を移植することが多く、その場合は臓器提供をした方の生存率もほぼほぼ１００％である。
もちろん力のある吸血鬼は大半の臓器を失っても簡単には死なないし、再生するのだけれど。
二つは吸血鬼の毒を注入すること。
昔レギュラスを救った時のように、吸血鬼の血と濃い魔力を体に送り込む方法である。
血自体には吸血鬼の魔力と呼ばれる回復能力や身体能力、吸血鬼性を生み出す能力はないとされているため、効果自体は短時間の場合が多い。人によって効果時間、アーサーさんのようになんの後遺症が出ない人から、レギュラスのように若い見た目が長く続く人、効き目もまちまちである。
三つは人間の女性に吸血鬼の子を孕ませること。
女の吸血鬼には生殖機能が基本ないため(固有の魔法であったり、私のように純血でない場合はあったりするけれど)、男性の吸血鬼と人間の女性の間にのみ子供ができることがある。
ただ、吸血鬼の胎児というものは人間の体の中に留めて置けるようなものではなく、多くの人は命を落とすという。
運よく生まれ落ちた子供は吸血鬼側の親の特徴を濃く受け継ぐ。
四つは、女性の吸血鬼が子を作ること。
私が該当するのはこれであり、極めて例が少ないパターンでもある。
元々非吸血鬼族の女性がなんらかの理由で吸血鬼になり、そのご吸血鬼性が一定失われた時に起こりうる現象と私は仮説を立てている。
私の場合は、お父様の心臓のみが魔力生成をしているので、他の吸血鬼と比べて魔力量が３割程度しかない。それが栄養失調やらで減っていれば、そりゃあ吸血鬼性が消えかけても仕方がないというもの。
『…後遺症残ったら、貴方…』
「いいんだ。
確かに両親は悲しむかもしれない。でも、君を一人にはできない。」
意を決した目でそういう彼に、私は断ることはできない。
実際、彼が手伝ってくれる立場にあれば、助かるのだ。
臓器を移植することはできないから、少々手間はかかるけれど、これからのことを思えばそんなこと微々たるものである。
シャツのボタンを緩め始めた彼をボーッと見ながら、私はコクリと生唾を飲み込んだ。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2020年5月5日 2時
