立場 ページ32
ーレギュラス視点ー
体の気怠さが残る。
ソファーには血の手形。
テーブルの上に置いてあったコップは倒れて割れていて。
僕の首の傷は未だ残っているのかと思いきや、そういうわけではないようだ。
Aには悪いことをしてしまっただろうか。
とはいえ、あれだけ顔色を悪くして、どこの誰のかもわからない血のタブレットを摂取するくらいなら。
大きなお世話だったのかもしれないけれど。
…いや、この部屋の有様を見るに、実際そうだったのだろう。
彼女の私物が入っていたトランクは無くなっており、唯一あるのは椅子にかかっているストールだけだ。
こんなことをしてしまった以上、学校が始まって僕がホグワーツに行くまでここには意地でも戻ってくることはないだろう。
当然か。自分が一番見せたくない部分を相手に強制的に暴かれたようなものなのだから。
ふらつく体に鞭を打ちながらドラコの部屋に向かう。
片付けておいたとはいえ、とりあえず事のあらましくらいは話しておいた方がいいだろう。
ドアをノックすればすぐに目をしょぼつかせたドラコが出てくる。
今まで寝ていたのかストレートの髪の毛にはクセがついている。
「なん…レギュラス、その血！」
「ちょっと。ありまして…」
概要を話せばドラコは顔をしかめた。
それは僕が完全に悪いと言いたそうな表情だ。
大きく深呼吸した彼は再び眉間のシワを消した。
「悪いがしばらくこの屋敷への出入り権を取り消させてもらいたくらいだ。が、もちろん僕の権限ではそんなことはできないからやらない。僕が当主でなくてよかったな、レギュラス。
Aのことは僕や母上で面倒を見る。」
何か僕が知らない情報を掴んでいるようなそんな物言い。
とはいえこんなことをしでかした僕は何かを言えるような立場にない。
Aのことよろしくお願いしますと言えばドラコは当たり前だと、腕を組んだ。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2020年5月5日 2時
