光のある世界に ページ27
『シシーさんもご存知でしょう、女の吸血鬼は子孫を残せない。
だから毒を注入するか、臓器を移植して眷属化させる。』
「確かに。
とはいえそれは純血の女の吸血鬼である場合。Aは元々人間で、今は吸血鬼の力は相当弱まっていることからして…一部が人間時の機能を取り戻していても不思議ではない。」
彼女のあまりに真剣な視線に私は少し怯んだ。
…子供が欲しいとは、確かに思っていたけれど私には無理だと思っていた…それに、今この時期はまずい。
学校に行くことになれば自分の体を第一に行動することはできないし、周りに被害が及ばないとも言い切れない。
レギュラスの匂いが近くですればするほど、私の飢餓は強くなるだろう。
そして何より、学術的な文献では見たことがない、異例の子供だ。
元人間で、貴族の吸血鬼の心臓を持った女の体の一部が人間としての機能が期せず復活して、こう言ってはなんだが、偶然できてしまった命。
二人の視線が私に向く中、何か言うべきなのに、言葉が出なかった。
確かに、吸血鬼としての機能が落ちていることはなんとなくわかっていた。
だからと言って、今、私に子供ができるだなんて。
「Aが産むというのなら、私が最後までサポートしよう。
これでも一児の母、頼ってもらっても構わない。」
彼女の優しい言葉が動揺した心を溶かしてくれるようで、知らずのうちに目から涙が溢れる。
握りしめた拳の上に大きな涙の粒が落ちていく。
嬉しいけれど、吸血鬼の体質を濃く受け継いだとしたら、この子は私を恨むかもしれない。
でも、子供が欲しいなら、これが最後のチャンス。
どうあがいても私は近いうちに終わりを迎える…ならば…
『シシーさん助けて。
この子に光のある美しき世界を…見せてあげたい。』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 43人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あやにゃん | 作成日時：2020年5月5日 2時
