忠誠 ページ22
『おはようございますレナさん、アルさん。』
「おはよー」
レナさんは瞳の色と合わせたミントグリーンのドレスを着ている。
大きくスリットが入っていて、右太腿のリボンには彼女の杖が挟まっている。
髪の毛はポニーテールにしてあって、つるりとしたサテンのリボンがひらひらと揺れた。
彼女の後ろの壁にもたれかかっているのはアルさん。
深緑のスーツで落ち着いた色のネクタイを閉めている。
左腰に帯剣していて、そこには邪気を払う聖剣が納められていて…どうしてか学校内で間近で見た時よりもそれを恐ろしく感じる。
「おはよう、Aちゃんにレギュラスくん。」
目をつぶっていたのを、チラリと右目だけ開けて、ウインクをしているような…何だかホグワーツにいた頃の女子の黄色い声が聞こえてきそうである。
若干彼からは距離を取りつつも少し言葉を交わす。
彼に私への攻撃意思はないと知りつつも…致命傷になりそうな武器を持っている相手と話すというのはそれなりにドキドキするものだ。
『…まぁ、少し忠告させてもらうと…魔法省、危ないですよ。っていうことだけ。』
「だろうね。
怪しい動きしている人がいたから…闇祓いが多く出払ってる今日あたり、危ないんじゃないかな。」
まぁ今は何をするつもりも別にないけど、ね。
と彼は意味ありげにそう言った。多分謎の忠告をしてくるところからして、私がどこかで噛んでいると思ったのだろう。
残念ながら、今のところはほとんど関与していないのだけれど。
『意外とあっさりしてるんですね、お二人とも。』
「だって私が誓う忠誠は魔法省にではないからねー。
我がアーサー王さえいれば、いいから。」
「俺の今の願いは守れるものを守ること。
民の安寧なんてのはもう王でない俺が叶えることではないからね。それは政治家がやるべき仕事だよ。」
それに、今の俺にはそこまでの圧倒的な魔力はない。
あるのは昔の軍事の知識と、どうしてか手元に戻ってきたこの剣だけ。
人差し指でその使い込まれた金の柄を撫でて、彼は少し悲しそうに微笑んだ。
それは昔に対しての無力感に対してか、再び戻ってきた剣に、それとも記憶と課せられた運命にか。私にはそれはわからなかった。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2020年5月5日 2時
