捨てロックハート ページ16
「こんな時だからこそ、お金があるものは経済を回さなければいけない。」
ある意味では"ノブレス・オブリージュ"。なお、ここにおいては社会的になあれではなく、お金的な意味合いで。
シャワーを浴びてリビングで本を読んでいたりだとか、書類を整理していればレギュラスは唐突にそう言って出かけるために着替えを始めた。
私に半袖のシャツと夏らしいシフォンのスカートを持ってきて、靴は真っ赤なサンダルを用意する。
髪の毛は綺麗にまとめあげられて…どこへ行くつもりなのだろう。
彼はいくつかの場所を経由して姿現しでどこかへ向かう。
多分監視の目があった場合にまくためだろうけれど、多分普通の人はこんなに連続して姿現しできるような三半規管を持ち合わせていないから５回も繰り返さなくて大丈夫だとは思う。
「というのは半分くらい口実で…ロックハートが捨てられているのを偶然拾ったんですよ。」
…そんな捨て犬みたいなこと言われても。
彼がいうには、ロックハートを見つけたのは本当に偶然ブラック領の視察に出かけた後にそのまま遠くの森の中を散歩していた時に見つけたそうだ。
村はずれの小さな家の庭を耕していたらしく、最初に見たときは目を疑ったとか…
どうやらロックハートは本当に服だけのために、どこかの武勲をあげたい死喰い人に家に拉致られた挙句、やっぱり必要ないとわかって何処かへと飛ばされたのだとか。
満足に姿眩ましができないロックハートはばらけることを恐れて降り立った地で再びテイラーをしているという、なんともまぁ、強い精神力の持ち主である。よくわからないけれど。
ドアを開けたらからんからんと可愛らしい音がなった。
中の作業台から出てきたのは今までよりも質素な服装のロックハート。髪の毛はいつものようにバッチリとセットされていて、もはや嫌味なまでの綺麗なブロンドだ。
「ああ、Aさん！！またお会いできるとは！」
ミュージカルの、姫を探して三千里歩いた王子のようなその様子にレギュラスは不覚にも吹きそうになっていた。
『えぇ、お久しぶりで…お元気そうで、何よりです。』
「私は今、木の葉の繊維から服を作ることにしていましてね、村の森の一角を借りて服屋をやっているんです！」
彼は嬉々として今までの出来事を語ってくれた。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2020年5月5日 2時
