祝い事 ページ15
久しぶりにレギュラスと体を重ねた気がした。
フィニとキャロルが今まで屋敷にいたこともあるし、低学年の頃は毎日のように子供体型のお互いを見て罪悪感があったからだと思われる。
砂糖を煮詰めたようなキスは、私をグズグズに溶かしきって、なんにももわからないようにしてくれた。現実逃避だ。
このために用意されたんであろう惚れ薬だかは、後々聞いた話なのだけれど、食後のデザートに仕込まれていたようで…
閑話休題。
ハーマイオニーから手紙が届いた。
彼女たち３人が旅に出ると決めたこと。
その事を私が知っておいて欲しいと話し合った事。
そしてどうしても結婚式に出席して欲しいという事。
『人の結婚式に出席するだなんて、随分と久しぶりな気がします。
貴方は？』
未だベッドの中でシーツしか纏っていない状態で飛んできた手紙の中身を見る。
綺麗な読みやすい文字は、いつもハーマイオニーのノートやらレポートに綴られているものと同じで、学校を思い出してなんだか変な感じがする。
「僕は…」
ふむ、と小首をかしげた。
よく考えたら彼が成人してからのほとんどの時間は私と過ごしてきたわけである。
そうなれば昔のことを聞いていることになるわけで…家族のことを思い出させるとなると、少し申し訳ない気分になった。
「昔、僕が１０歳の時かにあの人の狂信者が結婚式を挙げてましたね。
ただ…あれほど寂しい祝い事なんて、初めて見たと言わざるをえないようなものでしたね。」
ベラさんが、レストレンジ家に嫁いだ時の話をしているのだろう。
確かにあそこは政略結婚で愛のない結婚だと言われていた。それが恋愛結婚ではなかったにしても、少しくらいは伴侶に情が湧くというものなのに、あの二人はそのそぶりを見せない。
…どころかそりが合わなさすぎて夫婦喧嘩の範疇を超える呪いの掛け合いなんて日常茶飯事。会話らしいそれなんて一度も聞いたことがない。
「両親の仲もそれほどいいものではなかったですし…僕もあんな風によく知りもしない女性と家庭を作るのかと思っていた時期もありましたね。」
Aに出会って好きになるまで、ですけど。
彼は横に寝転ぶ私の髪の毛をすいた。愛おしそうに割れ物を触れるような優しい手つきに、その目に引き込まれそうになる。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2020年5月5日 2時
