信頼 ページ14
トンクスはジョージの傷を治した時の行動を見て、再び信頼してくれるようになった。
でも、そんないい話ばかりではない。
この度の件でハリーのふくろうのヘドウィグは撃ち落とされたし、マッドアイはどこかの死喰い人に襲われて死んでしまった。彼と同行していたマンダンガス・フレッチャーは恐ろしくなったのか姿眩ましをして何処かへ消えていった。
みんなでマッドアイの追悼代わりにファイア・ウィスキーを小さなカップを一杯飲んだ。
喉が焼けるような感覚と、甘ったるいシナモンの風味が私を現実に連れ戻す。
『私…そろそろ戻らないと、レギュラスが心配してしまいます。』
忙しそうに晩ご飯を振る舞おうとしているモリーさんに、こんな時に邪魔をして申し訳ないのだけれどという気持ちを抱きながらそう告げる。
この結界の中から姿眩ましをしても情報が外に漏れ出る心配はない。そこの心配はないと、彼女に説明をした。
「でも貴女酷い顔色よ。
それにさっきジョージのためにたくさん血を流したのだから、悪いことは言わないわ。もう少しここにいなさい。」
『いえ、本当に。そろそろ行きます。』
首を振ってモリーさんの私の右腕を掴む手を下ろす。
早めに戻っておかないと、あの人のとばっちりを受けそうで怖いんだもの。
「それなら、これを持っていって頂戴。
結婚式の招待状よ。これを持ってたら中に入れるようにしてあるから。良かったらレギュラスも連れていらっしゃいね。」
彼女は私の頭を胸に押し付けるように抱きしめた。
柔らかい洗剤の匂いと、美味しそうな夕飯の匂いが混じったような香りに私は少し安心した。
色々あっても…吸血鬼を抱きしめてくれる奇特な人がいるものだ。
『えぇ、喜んで。
モリーさん、挨拶できていない人によろしく伝えておいてください。』
何かを言いたそうな目でこちらを見てくるハリーに会釈をする。
どうして僕を見逃したんだ。スネイプは結局なんで。ダンブルドアの死は必要なものだったのか。マルフォイは。マッドアイが。学校に行けない。レギュラスは。
彼の目を見ているとざわざわと思考が流れてくる。
…わざと心を開けているのか、無意識のうちに私に何かを伝えようとしているのか…
ドアを引いて外に出る。
全く持って静かだ。さっきまで死闘が繰り広げられていたなどと誰が思うだろうか。
誰が、人が死んだなんて思うだろうか。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2020年5月5日 2時
