耳 ページ13
無事に何重にも張られた結界の中に入れた私は持っていた箒を投げ捨てて地面に横たわる。
血の匂いが充満していて目が回りそうだ。
…その中でも一番濃く感じるのが…そうか、ジョージが…
こうしてはいられないと、ゆっくり立ち上がる。
ずるずると箒をぬかるんだ地面に引きずって、暖かな明かりを灯すウィーズリー家へ。
『ジョージ。』
「…フレッドより、まだ僕の方が男前だと思わないかい…？」
私の姿を捉えた彼の目は痛みの所為かうつろで、微笑んでいるつもりなのか口元は引きつっていた。
私は口と鼻を左手で覆って、右手でその傷口に触る。
顔をしかめるジョージは小さく唸って、歯を食いしばった。
…セクタムセンプラ。セブルスの術だ。
でもそれだけじゃないのだろうか…どこか違和感を感じる。
『反対呪文…レナさん、お願いです。私の代わりに彼を…』
"ヴァルネラ・サネントゥール"
彼女にセクタムセンプラの反対呪文を教えると、素早くジョージの前に膝をついて、耳に杖を向けて歌うように詠唱をした。
血はゆっくりと傷口から戻っていくも、どこかで取れてしまった耳は再度生えてくるわけではなく、ポッカリと穴を残したまま塞がっていく。
「完全に治らない。
少しでも魔力を弱めようとすると傷が開こうとするの。」
レナさんが真剣に杖を握りしめてそう言った。
…セブルスのことだ。呪文を改良していてもおかしくはない。
ちょっとやそっとの回復呪文では、治らないような仕掛けを…
近くに置いてあったフルーツナイフで左掌を切り裂いた。
溢れ出る赤い液体をジョージの頭全体が血濡れになる勢いでかけて、解呪の方法を探る。
パッと魔法陣が耳で発動した瞬間、レナさんの治癒魔法によって耳の傷が綺麗に消えた。
彼女はそのまま私の左手をとって、自分の服が血で濡れるのを構わずエピスキーを唱えた。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2020年5月5日 2時
