ゲームオーバー ページ30
薄く魔力を張り巡らせても、向かう先であろう大木のところには巨人の気配がしない。
…ケンタウロスの近くにいる…？
他種族が嫌いなケンタウロスが手を組んだというのだろうか？
「…何にもないじゃない…貴女達騙したのね？
だから、子供は嫌いなのよ！！」
ヒステリックに金切り声を上げ出したアンブリッジは顔を真っ赤に、噴火寸前の火山のように染めた。
彼女はフラフラしてきた私に詰め寄り、杖を腕に突きつけ、"レダクト 粉々"と唱えた。
癇癪を起こして、八つ当たりをしなければ気が済まない子供かのように。
でもそれが間違い。
魔法大臣付上級次官殿、貴女以外が私の血の魔力を完全に引き出せないように封印をした。攻撃魔法なんて魔力の消費量が多いものは使えなかった。
でも、今、貴女が私を傷つけて、吸血鬼を無力化させる道具も使わずに…
好機
『校長先生。
ゲームオーバーです』
彼女が好きそうな、いかにも優等生みたいな声で、笑顔で、そう伝えたら失敗に気づいたのだろうか。
一転して顔を真っ青に染めて、懐の香水瓶に手をやろうとする前にそれは粉々に割れて中にこの一年で貯められ続けてきた血は空気に舞う。美しい、紅の薔薇のように。
するりとそれらは私の腕の傷から戻っていく。
体全体が温まるような感覚に包まれて、かけられた呪いを解いて、吹っ飛ばされた腕も再生させる。
フルパワーだったらこんな呪いくらい何重にかかっていても１秒もかからずに解けるというのに、なまじアンブリッジの魔力が強いから面倒臭い。
いやはや、この１年間この時のために貯金をありがとうございました。
「何、なにをするの！」
やってきたケンタウロスと巨人のグローピーにもみくちゃにされ、挙げ句の果てに森の奥へと連れて行かれてしまったアンブリッジを見て微笑みが漏れる。
いい気味だ。
いろんなくらーい感情が表に出ていたのかドラコは恐る恐るといった様子で私の顔を覗き込んだ。
蛇に睨まれたカエルのような、なんともかわいそうな表情だ。
「A…
戻らないのか？」
『…えぇ、そうしましょうか。
ほら、ハーマイオニー手をとって…』
こわごわと私の右腕をとったハーマイオニーと左手を握るドラコを巻き込んで、城の校門まで姿眩ましをした。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2019年9月2日 3時
