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「確たる証拠無しにのような狼藉を...？
.....わたくしはどうしてこんな無能な男に懸想していたのかしら」
思いのほか、声が明るく響いた。
ぱちりとまばたいたあとで、セドリックが聞き返す。
「.....？なんて言った、今」
「あなたみたいなクズで馬鹿で無能で将来性のない男がどうして好きだったのかしら、
と申しました。聞こえまして？」
目には見えない数々の矢印がセドリックにグサグサと突き刺さる。
今度こそ聞き間違えなかったのか、セドリックが沈黙した。
「こ、心にも無いことを....！！俺と復縁するのにリリアが邪魔なんだろう！？」
「復縁なんて死んでも御免ですわ」
「＿＿＿＿嘘をつけ！お前は俺を慕っていると、未練がましく言っただろう！」
ああ、あれがこの盛大な思い込みの原因か。冷めた目でアイリーンは吐き捨てる。
「慕って『いた』と申し上げました。過去形です。
わたくしはもうあなたを愛してなどおりません」
セドリックの表情が凍る。
「未練もないし、もう関わりたくもありません、
一刻も早く婚約破棄したいので、どうか書面に署名させて下さいませ」
マズイな、刺激し過ぎた、と先ほどまでAを宥めていたアイザックが察する。
Aも動きを止める。
「....そんなはずがない」
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「＿＿＿＿った！」
顎を乱暴につかまれた。
ぎらぎらしたセドリックの両目に息を飲む。
「正直に言え！お前の仕業だ...俺を忘れられずに」
「認めろ」
両腕をつかんで拘束していた衛兵達が、
セドリックの態度にひるんだのか力がゆるんだのが幸いだった。
自由になった手で、セドリックの手首をつかみ、はがそうとする。
だがびくとも動かない。息をするだけで精一杯だ。
「そうすれば慈悲を以ってお前の心情を慮ってやる....！」
周りがゾッとした表情に変わっていく。
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