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「確かに面倒だろうけれど、キース様はぎりぎりのところを見極めていた。
本当に従者として優秀だわ。わたくしが欲しいくらい。さすが魔王の左腕ね。そうでしょう?」
にこりと微笑みかけると、ベルゼビュートがふてくされたように応じる。
「それは、まあそうだが」
「キース様はこちらに必要な人間だわ、クロード様にも魔物たちにも、
勿論あなたもそう思うでしょう?」
「____気に入らん!」
吠えたベルゼビュートが、どかりと床に腰を下ろしてぶつぶつ言い出す。
「殴って解決では駄目なのか。どうしてだ。焼き払えばいい!人間の町など一瞬だ!」
「じゃあたとえばそこにドニの家があったら?」
通訳をしていたせいか、ベルゼビュートはドニと仲が良い。
腰から下げている剣は、ドニがデザインしそのツテで作ってやったものだ。
だからか、即答が返ってきた。
「燃やさない。あいつはいいヤツだ。その程度の調整はできる」
「じゃあ、あなたの知らないドニの友達がいたら?」
「.....」
難しい顔をして黙りこんでしまった。
苦笑いをしながら、アイリーンはベルゼビュートの頭に手を伸ばす。
そしてその頭を、できるだけ優しくなでてやった。
「....何の真似だ」
「頑張って考えているみたいだから、えらいなと思ったのよ。
____その調子で、色々学ぶといいわ。
きっとクロード様とキース様の役に立つ。
あなた本当は、キース様をたった一人で戦わせていた自分の不甲斐なさが、
我慢ならないんでしょう」
ぐっとベルゼビュートが詰まってしまった。
よしよしと、アイリーンはその頭をなで続ける。
「____いつまで撫でる」
「元気になるまで」
「ならもういい!____来たぞ」
聴覚と視力に優れているベルゼビュートの目配せに、慌てて地上を見る。
遠くからキースに向かって、いかにも怪しげな集団が近づいてきたところだった。
場所も何もかもイベント通りに、密売が始まった。
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