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「君はおかしい」
げっそりとしたクロードに、アイリーンは小首をかしげた。
「そうでしょうか。クロード様は責任感の強い方だと見込んでの策だったのですが」
「なんの責任だ」
「あら、それをわたくしに言わせようとなさるなんて」
「あっははははは、あははははは!」
紅茶を出してくれたキースが、ついに耐えかねたように笑い出し、クロードに睨まれる。
「何がおかしい、キース」
「だ、だって、魔物を人質にとって魔王を脅したあげく、媚 薬をもるご令嬢とか。
いやはや逸材ですよ」
「おほめにあずかり光栄ですわ、キース様」
用意された紅茶を一口含み、カップをソーサーに置く。
今いるのは、昨日アイリーンが寝かされていた応接室だ。
あくまで帰れというクロードを押し切って、ようやく一息ついたところだった。
人を案内できる場所がここしかないというのは問題だが、
出された紅茶もソファの座り心地も決して悪くはない。
笑い転げているキースが調えているのだろう。
「でも残念ですわ。クロード様に媚 薬がきかないなんて...」
「王にそのような小賢しい薬がきくか」
妙に誇らしそうにベルゼビュートが答える。
キースが苦笑交じりにつけたした。
「クロード様は散々毒 殺とか目論まれてますからね。
体に耐性がついちゃって薬がききにくいんですよ。っていうかそもそも魔王ですし」
「あら、でしたらもっと強力なのでしたら効きますかしら」
「君が用意した食べ物は、今後一切口にしないことにする」
「じゃあ別の方法を考えますわね」
「考えなくていい」
「だって時間がないんですもの」
頬に片手をあてて、悩ましげにアイリーンはため息を吐く。
「理由を聞いて下さいます?」
「聞きたくないんだが」
「そうですか。実は二ヶ月後の夜会に出ることになりまして」
「今、聞くか聞かないかの前置きは必要だったのか?」
「それでぜひ、クロードさまにエスコートをお願いしたいんですけれども」
「聞くしかないんだな、分かった。..しかしそれでどうして媚 薬になるんだ....。」
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