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でもどうしてだか突然に恥ずかしくなって、アイリーンは身じろぎした。
「(や、やたらと美形な人が目の前にいるとさすがに緊張が....あ、髪!
ぼさぼさ__っていうかああぁ!!!)」
今頃気づいた。
靴は泥で汚れているし、どこかにひっかけたのかドレスのレースはほつれ、全体的によれよれだ。
森の中を突っ切ってきたのだから仕方がない。
とはいえこれは由々しき事態だ。
この時代、完璧な装いこそが女性の戦装束であり、防御力なのだから。
「お、お見苦しい格好で失礼しました。もう一度、出直しますわ」
「出直す必要はない」
クロード様がぱちんと指を鳴らした。
魔物でもやってくるのかと身構えたが、ふわっと優しい風が足元から吹き上がり、
アイリーンの周囲を光をまき散らしながら舞う。
靴の泥が取れ、ほつれたレースが編みこまれたように戻り、
木の枝にひっかけた生地が修復され、綺麗になっていく。
ぼさぼさの髪の毛も丁寧にとかしなおされたように風と一緒に後ろに流れ、
心なしか疲労も軽くなった。
「(.....魔法だわ)」
ぱちりとまばたいたアイリーンにそっけなくクロードは告げる。
「これで二度とこなくていいだろう。帰れ」
「....わたくし、この服、宝物にしますわ」
「なに...?」
「だって魔法がかかったドレスなんですもの、素敵!」
目を輝かせてくるりと回ると、お忍び用のワンピースの裾が広がった。
同時に、花瓶に活けてあった花のつぼみが開く。
これも魔法だろうか。
瞳を輝かせて棚の上の花瓶を凝視したが、一輪つぼみが開いただけで、それ以上の変化はない。
不思議で、アイリーンは無表情のクロードに尋ねる。
「今、花が咲いたのも魔法ですの?」
「.....いや」
クロードはそれ以上答えない。
首を傾げているとクロードの斜め後ろから、キースが意味深に笑った。
「王よ、この娘を返すなら俺が屋敷までぶん投げるぞ」
「それは死ぬでしょうさすがに」
アイリーンはギッと目を吊り上げる。
「女性に対して酷い物言いですわ。
それからその恰好、破廉恥な上に季節感もめちゃくちゃです。
もっと品位ある装いと振る舞いをなさって下さい」
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