第三十二訓 ページ33
名乗りを上げたのは沖田総悟だった
一度試合したいと思っていたことだし、相手にとって不足ない
恐らくこの浪士組内でもトップクラスの腕の持ち主
とはいえ彼の試合稽古は何度か見ている
故に彼の動きの癖はある程度インプット済みだ
整列していた皆は場所をあけるため円状に広がった
その中心で対峙するAと沖田、そして審判として円内に立つ土方とその隣に近藤
「お、おいトシ…」
近藤は心配そうな表情を見せている
止めるべきか悩んでいる様子だ
「いいんだよ、近藤さん。これでコイツも諦めるだろう」
「おい、お前」
『…何』
Aにビシッと木刀を突き付けた沖田は不敵な笑みを浮かべている
「俺が勝ったら宣言通り、ここを出て行ってもらうぜ」
『もちろん。さっきも言ったけど私が勝ったら、これ以上の文句は受け付けないから』
_師匠!頑張ってください!
野次馬に紛れている立花からの声援がしんとした空間に響く
Aは笠を深く被り、気合を入れなおした
「一本勝負だ、両者構え」
_始め!
ヒュンッ
カン!
合図と同時に風を切る音が鳴り、木刀同士が勢いよくぶつかった
『へぇ…やっぱり防がれたか』
最初に攻め入ったのはAだ
驚いた顔を見せながらも流石の反射神経でしっかり攻撃を受け止めた沖田
相手が油断してるうちにさっさと終わらせようと思ったが、そう上手くはいかないらしい
「て、めェ…」
『楽しくなってきた、な!!』
いきなり激しい打ち合いを繰り広げる両者
久々の高揚感にAの口角が上がっていく
早さで上回るAが後ろをとり突きを繰り出す
沖田は思いきり横へ飛び、転がりながらそれを躱した
かと思えばすぐに体勢を立て直し
地面を蹴ってAへ向かう
『…グッ!』
脇から振り上げられた木刀を受け止めようとしたが受けきれず、Aの木刀が飛ばされる
『(一撃一撃が重いっ)』
カランという音をたて、木刀はAの後方へ落ちた
得物を失い無防備な状態になったところへ、にやりと笑みを浮かべた沖田が突きを放つ
間合いから外れるべく後方へ飛んで躱すが二手目の突きがAを襲う
「な!?」
バク転するように突きを避け、地面に手をつき勢いのまま足を沖田の身体に絡ませると、そのまま捻らせ渾身の力で投げ飛ばした
目を白黒させながら地面に叩きつけられる沖田
着地したAはその隙に木刀を手に取り体勢を整えなおした
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作者名:あまね | 作成日時:2019年2月4日 23時