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「−−−あれ?」
『........快斗君?』
楽器店から出てすぐに見知った彼に出会った。自然と並んで歩き出せば、先日の件を切り出す。
『−−−この間は、ありがとう。快斗君がホテルまで運んでくれたんだよね?』
「−−−え?あ、あぁ。何度か起こしたんだけど、起きなかったからさ。」
彼の言葉にごめんね、と言って苦笑した。
『−−−ところで、今日はどうして米花町に?お買いもの?』
「いや、ランディー・ホーク主催−−−ポール&アニーのアニマルショーを観に来たんだ。その帰り。」
『アニマルショー?』
首を傾げると、快斗君は苦笑する。
「一応、世界規模で有名なショーなんだけどな。」
世界中、旅をしながら公演を行なっているその一座は三年ぶりの来日ってこともあってかなり注目されているらしい。
「−−−そういう生活、少し憧れるからさ。」
彼はアニマルショーの目玉である白いライオンの話しをしてくれた。
「−−−げ、」
突然だった。妙な声を出した快斗君の視線を辿ればパトカーが何台も列を成して連なっているのが見える。何か事件でも起きたのだろうか?と首を傾げれば、そのパトカーに付き従うように見知った車が通り過ぎた。いつもは無表情ながらもどこか暖みがあるエメラルドの瞳が、凍てつくように冷たく光り、ニヒルに口元を歪めた表情はどこぞの悪役かとも思える。思わず、言葉を失った。
「−−−な、なぁ。今パトカーについていった車さ.......」
一度しか会ってない筈の快斗君も気づいたらしい。あの恐ろしい表情を見てしまったのだろう、口元をヒクつかせていた。
「−−−俺、あの時、あの人にお前を預けて大丈夫だったんだよな?」
彼の恐る恐ると言った言葉に、あはは、と引き攣るような笑い声がでた。
『.....いつもは優しいんだけど、ね。何かあったのかな、』
そう言いながら、既に走り去ってしまった道路を見遣る。いつもの彼ではないその表情に少しだけ不安を感じてしまった。
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