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「さて、そろそろ演奏も始まるだろうし、あの兄ちゃんも席についた頃だろ。戻ろうぜ。」
快斗君の提案に頷いたその時、4階の内廊下から物音が聞こえた。トントン、トントンとその音は徐々に大きくなっていく。私達はお互いに顔を見合わせると、音源へと向かった。
『.........ここ?』
その音源は一つの扉からだ。誰かいるのか?という快斗くんの声かけに、ドンと今まで以上に大きな音が鳴った。
「お前はここで待ってろ。」
快斗君はゆっくりと扉を開けて、中へと入っていく。それから数秒と経たずに、オッサン、大丈夫か!と彼の声を荒げる声が聞こえたため、私も慌てて室内へと飛び込んだ。
『......え?』
そこには両手両足を縛られ猿轡を噛まされている大柄な外国人がいて、丁度快斗君に抱き起こされているところだった。そして、その顔にはどことなく見覚えがある。確か、先日のリハーサルの時にちらりと見た顔だ。
『.......ミュラーさん?オルガン調律師の.....』
「知ってんのか?」
リハーサルの合間にパイプオルガンの調律をしていたのは彼だった。
『うん。一体誰がこんなことを......』
私は急いでミュラーさんの猿轡を取り除けば、彼が一息をつく間も無く声を荒げた。
「今すぐここから逃げろ!会場に爆弾が!」
彼の言葉に私達は大きく目を見開いた。
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