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「−−−Aさんはあの後大丈夫だった?」
コナン君は含みがありそうな、好奇心丸出しの瞳で見上げてくる。黄昏の館にいた毛利さんはずっとキッドの変装だったという衝撃の事実を聞かされた後のことだった。苦笑しながら戻ってきたばかりのバイオリンケースの取っ手を握りしめる。
『それがね........私、空中遊泳に耐えられなかったみたいで......そのまま気を失っちゃったんだよね。気づいたらホテルのベッドの上だったの。』
身体が怠くて.........結局お昼頃まで寝ちゃった、と言ったらコナン君が複雑そうな顔をしている。
『−−−どうかした?』
「え?あ、ううん。ただ、Aさんってお薬とか効きやすい体質だったりするのかなーって。」
『え?薬..............どうだろう。あまり飲む機会もないし、気にしたことなかったかも。最近は病院にもいかないし。』
「............風邪を引いた時も?」
『うん。気合いでなんとかする。』
そう言えばコナン君は空笑いを漏らしていた。いや、あまりにも熱が引かないなら解熱剤も検討するけれど、そうでもないのに下手に熱を下げてしまうのは............少し抵抗があるからね。
「−−−そう言えば、堂本アカデミーの爆発事故......まだ事故か事件か分かってないんだって。お昼のニュースで言ってたんだけど、見た?」
『.............ううん。』
「...........Aさんは、どう思う?」
コナン君の言葉に首を傾げた。事故なのか、事件なのか......ということだろうか。それなら、決まってる。当然、私は。
『−−−事件じゃなければ良いなとは、思ってるよ。』
そこに人の悪意があった、なんて思いたくはなかった。
「...............そっか。」
『−−−うん。』
今も懸命な治療が続けられているのだろう彼女の姿を想像して、瞼を閉じる。火傷が背部のみにとどまっていたとは言え、拘縮もあるだろうし、かなりのリハビリが必要になることは想像に難くない。でも、まずは早く意識を取り戻して欲しいと願うばかりだ。
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