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『..........園子、先輩?』
「そうそう、良いじゃない。えーと、そっちの子は−−−」
視線を向けられて驚く千秋は、一瞬の間の後に青柳千秋ですと名乗った。
「オーケー、ならAに千秋ね。」
「あ、園子狡いわ。千秋ちゃん、Aちゃん.....私の事も名前で」
「−−−貴女達、ここで何してるの?」
関係者以外、この会場自体立ち入り禁止のはずだけど?と、そう鋭く声をかけられる。あ、と即座に気づいた。彼女は大きなサングラスをかけているため一見分かりづらいが、美しい黒髪をラフに結い上げた彼女は、間違いなく秋庭怜子さんだ。日本屈指のソプラノ歌手であり河辺さんの友人でもある女性だった。
「−−−なんだこの姉ちゃん。」
何事かと集まってきた探偵団の子供達の口を慌てて塞ぎにかかる。
「−−−私達はちゃんと許可をもらってるわ。貴女こそ、誰よ。」
鈴木先輩改め、園子先輩が前にでて彼女と対峙した。
『そ、園子先輩、その方は......』
私の様子に彼女の正体に気づいたのだろう、隣にいる千秋も慌て始めた。
「貴女達も許可を貰ってるのよね?」
毛利先輩改め、蘭先輩が私達を振り返り訊ねてくる。私達が口を開く前に当然ですよ!と言葉を発したのは光彦君だった。
「Aさんも千秋さんも高校生バイオリニスト。どんな楽器の音にも負けない美しい音色を奏でるお二人は、日本音楽界のホープですからね。きっとこのリハーサルも招待されて−−−」
秋庭さんからの視線が痛い。あー、と片手で顔を覆った千秋に苦笑を零すと、光彦君の頭を撫でてやんわりと彼の言葉を止めた。
『私達を褒めてくれてありがとう、光彦君。光彦君の言葉は嬉しいんだけど−−−』
「........え?」
『−−−実はどんなに上手な奏者でも.......残念ながら人間の誰しもが持つ"歌声"には遠く及ばないの。』
楽器が発達して、"フルートのような声"と
いった楽器を使った表現まで登場してしまったが、たとえこれから先どれほど楽器が発達したところで、まるで発達などしない歌声を追い越すことはないだろう。それは、バイオリンにも当て嵌まることだった。
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