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『これ、全部......森谷さんが設計したんですか?』
私の昔の作品も飾ってあるため少々恥ずかしいのだがね、と森谷さんは笑った。若い頃はまだまだ未熟でね、あまり見ないでくれ.....と。
「これ.....」
蘭先輩が注視したのは、黒川邸と示された写真だった。殺害されたあの黒川院長の邸宅だと言う。その事件の数日後には火事にもみまわれてしまい、ここ連日でマスコミが大騒ぎしていたようだ。
『...............あ。』
森谷さんと蘭先輩達が話している傍らで、一番端に飾られていた写真に目が止まった。米花シティーホールだ。
「......緑川さんはこのホールが気になりますかな?」
森谷さんだった。
『−−3日の夜に、ここで演奏会をするんです。』
「それはそれは。ここは音響が良いと評判のホールでしてね。それではもう衣装も決まっているので?」
『今回と同じく黒色ですが、Aラインのドレスを着る予定です。』
「.......緑川さんは黒色がお好きなようですね。何か思入れでも?」
少しでも大人っぽく見せたいだけだった。黒は好きな色でもないし、特に思入れもない。けれど、そう答える気にもなれなくて、秀一さんの言葉を少しだけ引用させてもらうことにした。
『.......そうですね。全てを覆い隠してくれそうで、安心するのかもしれないです。だからついついこの色を選んでしまって。』
ほう、と森谷さんは微笑まれた。一方で、少し離れた場所にいたコナン君からの視線が痛いのだけれど、どうかしたのだろうか。いつもはクリクリとした可愛らしい彼の瞳がこの瞬間に細まってしまい、少しだけ怖さを感じた。
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