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『...........快斗君ってさ、魚料理苦手なの?』
彼はえ"、と固まる。思わず口元が緩んだ。
『さっき、メニュー表を一緒にみたでしょ?魚料理の写真、見ないようにしてたから。』
「............分かっちゃった?」
『うん、バレバレ。』
快斗君は深い溜息を吐いて力説する。魚が、どんなにヌベヌベしていて、どんなに生臭くて、どんなに気持ち悪い生き物かを。水族館も行きたくないらしい。彼の思った以上の魚嫌いに苦笑した。
「−−−なぁ。」
『−−−ん?』
「−−−平日の放課後だけでも、一緒に帰るか?Aの高校に迎えに行ったって良い。」
先程のおちゃらけた雰囲気は突如として消え、快斗君の静かな声に目を見開いた。
『−−−有難いけど、快斗君は江古田でしょ?遠回りだし、悪いよ。』
「−−−けどさ、」
『それに、照明の件だって私が狙われたとは限らないわけだし』
そう言えば、快斗君は暫く黙り込んだ。
「−−−ただ怖がらせるだけだと思って言わなかったんだけどさ。」
『−−−え?』
「初めてお前と会ったとき......ファミレス入っただろ?」
『−−−うん。』
「その時、窓越しに妙な視線を感じたんだ。」
快斗君が席を変えた時だろうか。そう思いながら彼を見つめれば、彼はコクリと頷いた。
「−−−だから、少し心配してた。」
俺の都合が悪い時はちゃんと言うからさ.......お互いの都合が良い時は帰ろうぜ、一緒に。と、そう言ってくれる彼の申し出を断ることなんてできなかった。
『知らず知らずのうちに快斗君に迷惑かけちゃってたんだね−−−快斗君が都合の良い時だけで良いから、一緒に帰ってもらっても良い?ごめんね。』
私が頭を下げると、快斗君は安堵したように破顔した。
「バーロー、なんで謝んだよ。俺が安心したくて言ってるんだぜ?」
『−−−、ありがとう。』
そうそう、ごめんよりもやーっぱありがとうの方が良いよなー。なんて言う快斗君がとてもあたたかい。冷める前に早く食おうぜ、と言う彼の言葉に頷くとフォークを手に持った。
その後レストランを出て、ホテルまでの道を快斗君と歩いていた時だった。快斗君に腕を引かれて背中に隠されると同時に傍で車が停まる音がした。
「−−−なんだ、あんたか。」
快斗君の言葉に彼の背中からその車を見やる。
「−−−邪魔したか?」
秀一さんだった。先程の凶悪顔は鳴りを潜めて、今はいつものような穏やかな色をしている。
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