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大上さんは最初に頭痛から始まり、頻脈、頻呼吸、それからの血圧低下。そして、喉元を抑える動作から呼吸器系に問題があるのかもしれない、そう推論すると座席下のバイオリンケースを見つめた。
「ーーー22時34分51秒。心肺停止を確認。この状況下では蘇生は不可能だ。」
白馬さんは、淡々と懐中時計を読み上げた。
『ーー待って。待ってください、白馬さん。心臓マッサージと人工呼吸を…私にさせて下さい!』
「ーーー許可できませんね。Aさん、この間とは状況が違う。君がやろうとしていることは、ともすれば危険な行為だ。」
『ーーーマウスtoマウスじゃなかったら、どうですか?』
私は阿笠さんと哀ちゃんに作ってもらったバックバルブマスクを取り出すと、白馬さんの隣にしゃがみこんだ。
『私は、まだ、諦めたくないんです。』
「ーーーおやおや。君は随分と良いものをお持ちで。」
それでも確率は低いですよと白馬さんは溜息をついたけれど、私の気持ちを組んでくれたのだろう。彼は大上さんに心臓マッサージをし始めた。私は私でマスクを大上さんに装着する。
「ーーーアーモンド臭がする。甘酸っぱい匂い。」
コナン君の言葉に首を傾げた。そんな匂い、しただろうか。
「無理もないわ。遺伝的に約半数の人はその匂いを感じとることができないらしいから。かく言う私もその口だし。」
槍田さんが言った。
「ーーーアーモンド臭ってことは青酸化合物によるシアン化中毒か!」
毛利さんの言葉に、白馬さんは頷いた。恐らく、大上さんの飲食物−−直前まで飲んでいた紅茶に混入されてあったのかもしれない、と。コナン君が毛利さんや茂木さんに急いで広間の扉を全開にするよう頼んでいた。
だから、白馬さんは人工呼吸をしては駄目と言ったのだろう。青酸化合物は揮発性、それも個体物を飲んだ時以上にガス化した状態の方が何倍も致死率が高いらしい。
「−−−−いんや、どうやら紅茶が原因ではないようだよ」
千間さんが10円玉を使い大上さんのカップの中の紅茶を調べたのだが、その反応がなかったらしい。大上さんに空気を送り込みながら、槍田さんを見上げた。
『ーーーあの、槍田さんは検視官だったと聞きました。ってことは、医学も履修されていますか?』
「ーーー警察学校時代に、法医学はね。」
『シアン化合物の具体的な解毒方法ってご存知ですか?』
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